ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

岡本信一の科学する農業

土壌を三次元的にとらえ、時間軸も考えろ!!!

土壌の物理性については、これまで述べてきたように非常に大事である。私自身は、土壌断面調査ではなく、貫入式土壌硬度計による土壌の物理性をするだけで、土壌を掘って調べるということはほとんどしない。よく行なうのは作物を生育途中で引っこ抜いて根の張りを調べるというものだ。
実は、土壌が大事、土づくりが大事、根の張りが大事と話しても、多くの方は見たことすらないというのが実態で、多くは地上部の生育から作物の成長を判断している。つまり、大事な生育中の土壌の状態や根の張りなど話題には上るが、あまり見ていないということになる。
科学的なアプローチで最も大事なことは、実際に何が起こっているのかを知るという事実認識である。土壌や根の張りの実態を知らないで土壌改良や根の張りを気にするというのは、ちょっとおかしいように思う。そこで、今回は、土壌の物理性について、できる限りわかりやすく書いてみたい。

作土層の深さが違えば
土壌改良の効果も変わる

根の張りといえば、作土層が問題になる。作土層というのは根が張る場所で、土壌表面から硬盤層までを指す。作土層の深さがどれくらいあるのかを把握しているとしても、それが栽培にどのように影響するのか、考えたことはあるだろうか。
まず、堆肥や緑肥のように大量に土壌に投入するものについては、作土層の深さによって、大きな違いが生じる。なぜなら、作土層の深さが10cmの場合と30cmの場合では、作土層の土の量が3倍になるためだ。この差は非常に大きい。もちろん、土壌の物理性や土質などにも関係するが、土壌の量が3倍も違えば全く結果が違うということになる。
ところが、一般的には緑肥でも堆肥でも、作土層の深さや土壌への投入方法を加味して考えられてはいない。「▲t/10a」というように作土層の深さに対しての言及がなく、面積当たりの投入量で説明されていることが多い。土壌改良材も同じで、改良したい土の量が3倍なら、改良剤も3倍必要になっても不思議ではないのだが。
さらに土壌に投入するものといえば、肥料がある。これも、面積当たりに投入する量を計算する。普通に考えれば、作土の深さが変わっても、投入される養分の量は変わらない。しかし、作物側からすると全く違う状態になっているのだ。
わかりやすいのは、浸透圧の変化である。浸透圧について簡単に説明すると、濃度の違う水溶液の間に水だけを通す膜があるとすると、水は濃度の濃い方に膜を通って移動して、結果的に濃度が一定になる。濃度の差によって浸透圧が発生し、水が移動することによる。
これだけだとなんのことかわかりにくいと思うので、身近によくある漬物で説明してみよう。野菜に塩をまぶして、重石を置いておくと翌日には水が野菜から抜けて塩味の野菜になる。これも浸透圧を利用した現象で、野菜に含まれる水分が濃度の濃い外側に移動し、塩分は濃度の薄い野菜の内部に入る。植物であろうと人間であろうとどんな生物でも同じように作用する物理的現象である。

関連記事

powered by weblio