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新・農業経営者ルポ

絶望の中で未来を見出した起業家


もちろん、産地名を山元町に変えてもらうよう、関係者に働きかけることはできる。ただ、たとえ実現できたとしても、農業団体と生産者の間に軋轢を生んでしまうかもしれない。それよりは自分たちでイチゴを作り、それをブランド化すれば、その成果を見て他の農家も後からついてくるのではないか。そう思いついた岩佐はすぐに動き出す。ボランティアで知り合った山元町社会福祉協議会の橋元洋平と、その遠縁のイチゴ農家である橋元忠嗣(ともに現在は(株)GRA副社長)とともに、500万円ずつを出し合って計1000万円でビニールハウスを建てたのだ。
震災の影響で水の供給が滞っていたため、井戸を掘って地下水をくみ上げて塩分濃度を測ったところ、予想どおり高かった。といっても脱塩する浄化装置はなく、地下水でとりあえず栽培したところ、枯れることなく思いのほか実った。これに自信を得た岩佐は以後、学生時代に創業した(株)ズノウの経営は社員に任せ、GRAの仕事にまい進していく。
11年末に祖父母が所有する農地1haを借りてハウスを竣工。翌12年秋にも別の人たちから2.5haを借り、4億8000万円を投じて増築した。いずれのハウスもオランダ発祥のフェンロー型で、冒頭に紹介したように田んぼの真ん中に鎮座している。
このハウスに入ると、通路はコンクリートで打ってある。品目別に区切られた部屋ではどこでも高設栽培をしていた。作っているイチゴの品種は「とちおとめ」「もういっこ」「おおきみ」。このほか、ビタミンCを多く含む「おいCベリー」、桃やココナッツに似た香りがする「」、四季成りの「UCアルビオン」といった珍しい品種もある。
生産部隊は30人。作業者のモチベーションを維持するため、イチゴとトマトで担当者を分けていない。同じ作業を淡々とこなすより、いろいろこなしたほうが仕事ははかどると見ている。

コンピュータによる環境制御

彼らの栽培の知恵袋は副社長を務める橋元忠嗣である。イチゴづくり35年のベテランが持っている栽培に関する知識を一つひとつ聞き出して集約化し、従業員に教えるほか、その情報を基にハウス内の環境をコンピュータで一括管理できるようにもした。ハウス内にはセンサーがあって室温や湿度を常に計測しており、それらの変化に応じて天窓やシェードが自動的に開閉するようになっている。
苗の半分は自家生産。施設内にある育苗用の予冷庫で花芽分化を促して全体の出荷時期をコントロールするためだ。

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