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小川幸夫の虫の世界から見る農業

臭くないカメムシ!?

カメムシというと害虫で臭いというイメージだが、臭くないカメムシもいる。それは肉食のカメムシたちだ。野菜を食べる害虫を食べてくれるカメムシ、つまり農業では益虫の部類に入る。今年は害虫のカメムシの発生が多い年だったが、畑には何かにつけてイメージの悪い害虫のカメムシだけではなく、人間にとって都合の良いカメムシたちがいる。ちなみに、カメムシの仲間だけで日本に約3000種類いるというのは驚きだ。この多種多様なカメムシたちの生態がわからないことだらけなのは当然である。
カメムシの臭いにおいは
警戒信号!?

カメムシは、外敵から攻撃されると臭いにおいを発する。筆者は、この行為が動物でいうスカンクのような防御目的だと思っていたが、どうもそれ以外にあのにおいには役割があるようだ。
カメムシは、幼齢幼虫のときには集団で行動しているが、何かに攻撃されると自分たちのにおいで一斉に離散する。筆者が捕殺しようとしても四方八方散り散りに逃げられる。その結果、まとめて捕殺する機会を逃してしまう。生き残った幼齢カメムシたちはまた少し時間が経つと寄せ集まって群れる。この現象を見ると臭いにおいを出すのは仲間への警報の役割があるのだとわかる。これは、幼齢期に集団で身を寄せ合って身を守っている虫たちに共通した特徴かもしれない。

サナギを経ないで
そのまま大きく成長する
不完全変態

カメムシの卵の多くは葉の裏などにきれいに並べて産み付けられる。ホオズキカメムシの卵はルビー色で形も美しく、並び方も芸術的だ。その卵からかわいらしい小さな幼虫カメムシが生まれてくる。これがそのまま大きくなって羽が生えてくるのだが、途中にサナギという段階がない。蝶のようにサナギという形を通して、幼虫とはかけ離れた形になるものを完全変態という。それに対して、カメムシのように幼虫がそのまま成長していくものを不完全変態という。
よく筆者にテントウムシがいたよと教えてくれる子どもや大人がいるが、かなりの確率でテントウムシではなく、カメムシの幼虫であることが多い。気をつけないと害虫のカメムシをテントウムシと勘違いして放置しかねない。見た目での判断は注意が必要だ。

害虫のカメムシは
ほぼ100%、
刺激すると臭いにおいを出す

害虫のカメムシは畑にいろんなものが存在する。今年、多かったカメムシは、アオクサカメムシやチャバネアオカメムシ、ブチヒゲカメムシ、クサギカメムシ、ホソヘリカメムシ、そしてマルカメムシやナガメなどだ。必ずしも100%そうだといえないが、草食性の害虫カメムシに共通していることは触ると臭いにおいを出すことにある。しかし、カメムシといっても色も大きさも形も多種多様だ。好んで吸汁する作物もそれぞれ違う。アオクサカメムシやブチヒゲカメムシ、クサギカメムシはトウモロコシやナス、キュウリなど幅広く食害するのに対し、ホソヘリカメムシやマルカメムシはエダマメなどのマメ科をより好む。また、ナガメはアブラナ科を食害する。
これ以外にもたくさんのカメムシが畑にいるが、それほど気にもならないのは作物に対してそれほど害をなさないものが多いからだ。いわゆる雑食的なカメムシたちで、作物を吸汁するほかに受粉したり、害虫を食べたりしていると考えられる。

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