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岡本信一の科学する農業

収益の上がる生産効率化とは


しかし、農業の現場においては、同じような事例が頻繁に発生する。規模を拡大したのはいいけれど、歩留まりが悪く、収量も低いし、天気の影響も非常に受けやすい農場があるとしよう。当然、収益性が悪く利益が上がっていない。そういった状況ゆえに、もっと人や機械、作業工程を効率化する方向に舵をきってしまうのである。場合によっては外部から専門家を招いたり、システム導入などによって、こういった生産工程の見直しを薦められたりもする。
皆さん、こういった効率化は効果があると思われるだろうか? やるべき効率化の方向性が間違っていると思うのではないだろうか?

絶対に手を抜いてはいけない
工程は譲らないこと

実際、このような取り組みはほとんど失敗し、さらに収益性は悪化する。先に手を付けるべきは生産効率の向上ではなく、歩留まりや収量、品質、安定生産の実現である。安定的に生産できるようになってから工程の見直しを図り、生産効率の追求をするべきなのだ。
どの段階で間違ってしまうのか、具体的に検証してみよう。
栽培においては、絶対に失敗してはならない工程というものがある。苗づくりや播種床づくり、温度管理など作物、作型によっていろいろあるが、重要な部分だけは絶対に無理がかかるようにしてはならない。
ところが、現実には、限られた人や機械で作業を行なうので、効率を優先してギリギリの状態で作業を進めてしまうことが多い。これが失敗につながる。ギリギリの人員と機械では、天候や作物の変化に対応した適切な管理ができなくなってしまうためである。
たとえば、重要な作業に播種床づくりがある。ギリギリの状態で行なおうとすると、土壌が十分に乾いていない圃場条件でも無理に作業を行なったり、最適な作業速度よりも速く(雑に)終わらせることになる。その結果、土壌の砕土具合が悪い、播種深さが安定しない、発芽率が悪い、旱魃や多雨の影響を受けやすくなる……といった諸問題を誘発するのである。作業の効率化が進んだように見えて、播種床づくりだけでなく、その後の作業にも影響が及ぶ。歩留まりは上がるはずがなく、下がる一方なのだ。
一見すると同じような機械を使用して、同じ品種の苗を同じ株間で植えたとしても、作物の出来に違いが現れるというのは、この辺りに起因する。大事な作業については、ある程度、余裕のある状態で行なわないと、逆に収益低下を招くのである。
理屈ではわかると思うのだが、実際の現場においては、平然と省力化という名のもとに雑な作業が行なわれてしまっているのが現状だ。

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