記事閲覧
【耕すということ】
石礫除去・表層作土処理技術
- 農学博士 村井信仁
- 第17回 1996年06月01日
- この記事をPDFで読む
わが国の農耕地面積は、約510万haである。この面積では、現在消費している食糧の26%しか生産できない。つまり、農耕地換算では、日本という国は26%しか食糧を自給できない国ということである。豊かな食糧が生活を安定させ、文化を育むと言われる。したがってこのように食糧をよその国に4分の3も依存する文明国というのは、異常としか言いようがない。
それでも経済力があるうちはまだよいとして、すでに日本国経済は陰りをみせてきていることからすれば、これまでのような円高がいつまでも続くとは思えない。現在のように有利に食糧を買い付けできるとは限らないであろう。食糧の自給率を高める手段を、できるところから始めていなければならないのではなかろうか。
現在、わが国の農耕地は住宅団地などに浸蝕され、年ごとに約4万haずつ減少している。この減少を食い止めることが先決であろうが、”国民総平和ボケ”の時代にあっては無理であろう。食糧生産の拠点にある地方自治体ですら、人口減を食い止めるとの名目で農耕地を潰し、便利な住宅団地を提供することに懸命であるからだ。何を以て社会に貢献するか、その本質を忘れている。
便利な場所に立派な住宅を建設しても、将来食糧が不足すればどうなるのであろうか。住宅と心中する気らしい。生活にとって何よりも大切なのは食糧なのである。人間は飢えには耐えられないものである。戦中戦後の苦しさを思い出すべきであるが、あの経験が生きないとは情けないことである。
それでは、自給率を高めるために、志のある農業者は何をなすべきか。農耕地面積に限度がある限りにおいては、単位面積当たりの収量増を狙うしかないであろう。土層、土壌改良が改めて大きなウェイトを占めることになる。今回取り上げる石礫除去もその一環である。
石礫圃場は、多くの場合比較的生産性が高く、石礫だけが障害であり、厄介な存在であった。石礫を除去することによって、一段と生産性は高まり、省力化も可能となる。機械の耐久性も増す。
また農耕地を増やそうとすれば、これまで不適地といわれたところにもあえて鍬を入れなければならないであろう。そんな中で石礫が多いばかりに放置されている場所が多いのが実態である。新しい本格的な石礫除去工法で農耕地を増やす試みがあってよい。
石礫との闘いは、わが国に限ったものではない。ヨーロッパの各地では、いまでも手作業で石礫を拾い集め、塁を作っているのを見ることがある。石礫除去事業は世界的課題でもある。
しかし、石礫除去事業は系統づけられて体系化されていないのが実情である。石礫の多い場所で無理に農業をすべきでないと考えている、あるいは、石礫があまり負担にならない牧草などを栽培すべきと割り切っていることからなのかもしれない。
しかしわが国の面積事情からすると、そう簡単に結論づけることはできない。土地に余裕がなければ、石礫圃場を避けて通ることはできないのである。一般作物が栽培できるように石礫除去に挑戦するしかない。
不十分といいながら、わが国の石礫除去事業はある面では欧米の技術を参考にしながら、現在では世界一の水準にあるといえる。石礫除去事業は、最近停滞ぎみであるが、これから発展させなければならないものである。これまでの発達の経過、機種内容、展望等について整理してみよう。
それでも経済力があるうちはまだよいとして、すでに日本国経済は陰りをみせてきていることからすれば、これまでのような円高がいつまでも続くとは思えない。現在のように有利に食糧を買い付けできるとは限らないであろう。食糧の自給率を高める手段を、できるところから始めていなければならないのではなかろうか。
現在、わが国の農耕地は住宅団地などに浸蝕され、年ごとに約4万haずつ減少している。この減少を食い止めることが先決であろうが、”国民総平和ボケ”の時代にあっては無理であろう。食糧生産の拠点にある地方自治体ですら、人口減を食い止めるとの名目で農耕地を潰し、便利な住宅団地を提供することに懸命であるからだ。何を以て社会に貢献するか、その本質を忘れている。
便利な場所に立派な住宅を建設しても、将来食糧が不足すればどうなるのであろうか。住宅と心中する気らしい。生活にとって何よりも大切なのは食糧なのである。人間は飢えには耐えられないものである。戦中戦後の苦しさを思い出すべきであるが、あの経験が生きないとは情けないことである。
それでは、自給率を高めるために、志のある農業者は何をなすべきか。農耕地面積に限度がある限りにおいては、単位面積当たりの収量増を狙うしかないであろう。土層、土壌改良が改めて大きなウェイトを占めることになる。今回取り上げる石礫除去もその一環である。
石礫圃場は、多くの場合比較的生産性が高く、石礫だけが障害であり、厄介な存在であった。石礫を除去することによって、一段と生産性は高まり、省力化も可能となる。機械の耐久性も増す。
また農耕地を増やそうとすれば、これまで不適地といわれたところにもあえて鍬を入れなければならないであろう。そんな中で石礫が多いばかりに放置されている場所が多いのが実態である。新しい本格的な石礫除去工法で農耕地を増やす試みがあってよい。
石礫との闘いは、わが国に限ったものではない。ヨーロッパの各地では、いまでも手作業で石礫を拾い集め、塁を作っているのを見ることがある。石礫除去事業は世界的課題でもある。
しかし、石礫除去事業は系統づけられて体系化されていないのが実情である。石礫の多い場所で無理に農業をすべきでないと考えている、あるいは、石礫があまり負担にならない牧草などを栽培すべきと割り切っていることからなのかもしれない。
しかしわが国の面積事情からすると、そう簡単に結論づけることはできない。土地に余裕がなければ、石礫圃場を避けて通ることはできないのである。一般作物が栽培できるように石礫除去に挑戦するしかない。
不十分といいながら、わが国の石礫除去事業はある面では欧米の技術を参考にしながら、現在では世界一の水準にあるといえる。石礫除去事業は、最近停滞ぎみであるが、これから発展させなければならないものである。これまでの発達の経過、機種内容、展望等について整理してみよう。
会員の方はここからログイン
村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
耕すということ
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)