ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

岡本信一の科学する農業

将来、生き残るための農業生産の原則とは


では、どのようなことから対応するべきか。農業が農産物を生産して販売をする産業であるというところから考えると、きちんと農産物を生産できることが最も大事である。消費者や需要者のニーズを掴み、それに応える生産を行なうことである。
消費者や需要者のニーズと聞くと、品質やおいしさを真っ先に考える方が多い。しかし、本当に高品質でおいしさを追求した農産物が求められているのだろうか。この点について考えるのが今回の目的である。

巨大マーケットのニーズは
不作時に供給できること

古来より農産物の生産に求められてきたのは、どのようなときにも足りるように作ること。単純に、農産物というのは食べ物なので、食べたいときになければ困るからだ。農業技術は、飢饉を起こさないようにするために発達してきたといっても良いくらいである。
現在は生産に限らず、流通技術などが発達したおかげで、いつでも食糧がある状態にある。日本では飽食の時代と言われるように、食糧が有り余っているように思えるのは、足りない時に食糧を輸入できるからであって、現状、国内の農産物は常に不足しているのである。自給率が低いのだから当然だが、多くの人がそのことを忘れているように思う。
消費の現場を見ると、基本的に安くて良いものが比較的売れやすい。ところが、海外産の農産物が店頭に並ぶと極端な価格差がなければ国産のものから売れていく。1.5~2倍の価格差であっても国産のものから売れていったりするわけだ。さらに消費行動からは、外食であったり、惣菜やお弁当などの中食であったり、価格的に自分で作ったほうが安いものでも、利便性を求めて高くても購入している。こういった状況を考えると、少なくとも消費者は安ければいいなどと思っていないということがわかる。
一方、価格の高い高品質のものが売れるかというと、高価格帯の農産物というのは本当に限られた市場に過ぎない。
つまり、そこに存在する巨大なマーケットには、価格が高くても安くても関係ないという普遍的なニーズがある。農業に携わっている人なら、不作時に農産物を供給できれば大儲けできることをご存知だろう。
消費者も小売業者も、明らかに不作時に農産物を確保したいのであり、潤沢に余っている時には欲しがらない。これは、加工、外食、中食どのような分野でも同じである。当然、余っている時に高く買ってくれないと文句を言うよりも、マーケットに足りない時にいつも供給できるようにしたほうが、生産側に価格交渉能力が生まれる。ものが余っている時にいくら交渉しても、価格交渉は決裂するだけで、ものがないときに供給できることが決定的だからだ。

関連記事

powered by weblio