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岡本信一の科学する農業

将来、生き残るための農業生産の原則とは


農業生産の原則は
安定品質と安定供給

私は、農業を経営という観点で見た場合、農業生産の原則は安定品質と安定供給だと考えている。
需要者側は高品質な農産物なら欲しがるかというと実はそうでもない。高品質ならいつも現物があり、その品質が維持されていることが最低条件になる。農産物のように品質がバラつきやすいもので高品質を追求するというのは至難の業である。まずは、安定品質ということを目指すべきである。安定品質で生産できない段階で、高品質を追求すると、まともな農産物もとれないという結果になりかねないからだ。
農産物というのは、基本的に一品目を食べるものではなく、さまざまなものと組み合わせて食べるわけで一つだけ品質が良くてもあまり意味がない。でき上がった料理を完成した車と見立てると、長くて20~30年しか使用できない車に100年以上持つボルトを使っても過剰品質になる。ニーズに合わせた農産物の品質はそのように考えるべきであって、自己満足的な高品質な農産物は求められていないのである。
次に安定供給だが、仮に安定品質のニーズに見合った農産物であったとしても、物量がなければどうにもならない。これは切実な問題で、需要者側が欲しがる時はとにかく現物がないという状況なのだから、必要なのは現物であって、品質度外視でも構わない。最近良く言われる、量より質ではなく、質より量が大事なのである。
現物がなくては話にならない、ということをよく考えるとお分かりいただけると思う。日本でも、ものがない、思い通りの品質のものがないという状況は頻繁に発生している。需要側は、ものがないという時に供給できる生産者、生産団体を求めていると言っても過言ではない。本当のニーズは安定品質、安定供給にあり、それ以上でもそれ以下でもない。
栽培技術というと土づくりや品質の追求、多収量ということに向かいがちだが、本当にそれが経営に結びついているのか。既に現在、安定的に安定品質の農産物を安定的に供給できているということは巨大なニーズにマッチし、どのような条件でも生き残れるだろう。
今年のような天候であれば、今回私が書いたことがよくわかると思う。マーケットに流行りはあっても、本質的なこのニーズは小さくなることがない。当たり前過ぎて顕在化しないが、天候に左右されるというのは、農産物の宿命である。ものがないときに供給できる栽培技術を持つことが普遍的なテーマではないだろうか。

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