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海外レポート

最先端の施設園芸が導く生産・流通イノベーション、オランダの「スマートアグリ」を検証する


かくして、従来型の卸売市場が実質的に姿を消し、生産者は、当初は伝統的な産地卸売市場を合併させた協同組合組織グリナリー(Greenery)など出荷して販売を委託したり、現在では大手の生産者は仲間同士で「生産者組織」を設けてパッケージなどの加工を施し、スーパーや卸売業者に販売する青果物流通システムに移行してきたのである。
こうした推移のなか、生産者数を減らしながらも生産面積は大型化し、高品質、低コスト生産を目指すスマートアグリが形成されていった。やはり大型化するスーパーなど小売業界との交渉力を強化するための、これが伝統的な“商売人”の国、オランダにとっては必然的な流れでもあった。
オランダは、「ヨーロッパの野菜畑」と呼ばれるように、園芸農業を発展させ、ヨーロッパ諸国に輸出する農業国づくりを進めてきた。そして、現在でも国内生産の7割近くを輸出し、園芸農業で世界第2位の農産物輸出国となった。最大の輸出先国は隣国のドイツで全体の4割近くを占め、英国がそれに続く。輸出は年々増加しており、とくにEU圏内を中心として輸出先国が増えてきている。
大型トマト生産者5人が共同出資した大型パッキング工場「グリーンパック」社が、15種類のトマトを1週間に200万パック製造、年間8万5000tもの処理能力を有するといった事例が代表するように、オランダは、スマートアグリシステムを武器に、徹底した輸出戦略を取ってきているのだ。

課題は国内マーケットへの
供給体制に

最先端の施設園芸・スマートアグリによって不動となった、世界第2位の農産物輸出国という表看板を誇る一方で、オランダ国内の流通販売の実態はどうなっているのか。青果物の国内生産量は450万t程度だが、そのうちほぼ7割が輸出に向けられ、国内消費量は2割程度で残りは食品加工業に流れている。北の国オランダは、地場の青果物には恵まれず、輸入量は国内生産よりも多い。ただし、輸入したものを再び輸出する再輸出量は輸入量の7割を超えている。オランダがいわゆる“物流商人の国”といわれるゆえんでもある。
現在、青果物の流通業者――卸売業者、輸出入業者、包装業者――は合わせて約800社程度だといわれるが、彼らがオランダの野菜流通の品ぞろえと卸売機能を担う。卸売業者は、基本的に一般の流通業者同様に店を構えているが、かつてのアムステルダム市公設市場には、そのうち90社程度が入場しているものの、市場は「アムステルダム・フード・センター」と名称を変えており、配送問屋に混じって業務用スーパーや倉庫型のキャッシュアンドキャリーも入場して買出人の便宜を図っている。敷地の奥には、20年前までは現役だった5階建て相当の、無柱ホールを持つ旧卸売市場が、歴史的建造物としての保存処理の最中にある。現在のオランダの流通事情を象徴するかのような風景だった。

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