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【ライスボードのポジティブ米ニケーション】
都会の人々の憧れる“田舎風”は“田舎臭さ”とは違うもの
- 豊永有
- 第1回 1996年06月01日
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都会の人々の憧れる“田舎風”は“田舎臭さ”とは違うもの
「今年はうまく育つかしら」、「ちゃんとお水をやるよ」なじみの若いお母さんが小学生の男の子のために苗をあれかこれかと選ぶ。隣のはんこ屋のおばちゃんが、「去年は2匹イナゴが来たね。びっくりしたよ。今年は何匹集まるか楽しみだね」と話しかける。
今年もテイクアウト用の味噌汁カップに苗を小分けにして店先に置いた。昨年は約600カップが通行人にもらわれていった。
「越後ぎんむす」のある武蔵野市吉祥寺中道通り周辺を散策すると、プランターやバケツで田植えをしている家庭があちらこちらに見受けられる。植えられている苗は私たちが無料配布したものだ。
「越後ぎんむす」は新潟県内の130軒の生産者が出資して経営している「株式会社ライスボード新潟」の直営店だ。
【信ずるべきは自分の力と消費者】
「株式会社ライスボード新潟」は平成3年、将来の自由化を生き残り、「おいしさと安全と安心」を直接消費者に届けるために設立された。あえて株式会社を選んだのは補助金農業からの脱却を意味している。ライスボードの誕生は各方面にセンセーショナルであったらしい。設立発起人総会には70軒が名を連ねていたが様々な切り崩しにあい、妨害・中傷にめげず残った仲間は18軒だった。
当時、主要食糧は国家による一元管理が建前だった。米業界では自由米・ヤミ米・自主流通米が市場流通を支配していたとしても、米流通に関わるにはやはり集荷免許か販売免許のいずれかの認可が必要だ。農家が集まったからといって自分たちの育てた米を自由に流通させることはできない。そこで、知恵を出し合い特別栽培米制度を利用した。生産者と消費者の仲介代行ならば免許制度に違反しない。食糧事務所の検査を受けることで公的機関からのお墨付きをいただけるのだ。しかも、減反を達成していない生産者は特別栽培米制度を利用できない。自己の利益のためにヤミ米を流している生産者と一線を画せる。法律を遵守していく企業姿勢は私たちに追い風となった。しかし、風が吹くまでには数多くの受難をくぐり抜けなければならなかった。
四季を通じて消費者と取り引きをするには、相当な設備投資が必要になる。低温倉庫・精米設備・顧客管理の電算機器の導入、従業員の雇用など、個人の生産者が負担するのは無理だ。ライスボードは一括で流通の設備投資をすることにより、個々の生産者の負担とリスクを引き受けた。だから、生産者は稲作りに集中できるのだ。
生産者が一番イヤがる煩雑な食糧事務所への書類申請。この重箱の隅をつつくような非生産的な書類作りがイヤで特別栽培米制度を利用しない生産者も多い。その気持ちは事務方の私にもよくわかる。平成5年度は生産者35軒分を申請した。一回の書類申請だけで厚さが約7cmぐらいになった。同じような内容を一年間に何度も提出させられるのだ。
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豊永有
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