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エコフィードを始めたのは飼料の高騰に対応するためだ。農林水産省が8月に作成した資料「エコフィードをめぐる情勢」によると、リキッドフィーディングの販売価格の全国平均はキロ5.7円。セブンフーズの製造原価は「企業秘密」というので明かせないが、自社製造したものを使っているため、その価格はおおむね想像できるだろう。
エコフィードで固体ではなく液体を選んだのは豚の嗜好性や消化の良さからだ。
原料の調達や製造の過程は次のような仕組みになる。食品残さは、その収集と運搬に関する資格を持つセブンワークスが西日本12府県の冷凍食品工場から回収する。その後、セブンフーズの産業廃棄物の中間処理施設でリキッドフィーディングに変える。それを与えた豚の糞尿は発酵床で微生物によって分解される。その発酵床は1年以上使ったら堆肥にし、自社で所有する10haのキャベツ畑で再利用する。収穫したキャベツは冷凍食品会社に出荷し、ギョーザの原料になる。その加工の過程で除去した外葉や芯はまた液体飼料の原料にする。こうした資源循環の仕組みを築いているのだ。
食品残さの提供元は65社、月間の取扱量は1300t。農業法人でこれだけの量のエコフィードを自社製造している養豚業者は全国でも数少ない。
いまでは配合飼料の最大40%をエコフィードに置き換えられるようになった。同じ目的で飼料用米についても県内外26戸の農家と48haで契約栽培している。
エコフィードの製造にあたっては、各個体の生育ステージや豚舎の外気温に合わせ、最適な飼料設計をしている。エコフィードを与えた豚の肉は霜降りが入りやすく、味もおいしい。
「あそび豚」と「未来村とん」
こうした環境で育てた肉豚で二つのブランドをつくった。出荷量の95%を占めるのはハイポー種の「あそび豚」。「あそび」は広い豚房で自由に遊び回る様子に加え、農場から眺められる「阿蘇山」から命名した。もう一つのブランドはケンボロー種の「未来村とん」で、近隣の養豚農家4戸で結成した熊本未来会の共同ブランド。両ブランドとも大手食肉卸スターゼンを通して全国に販売している。
地域社会の理解あっての事業
ところで、二本目の柱である「自然・生活環境への配慮」についてはあっさり書いてしまったが、これがセブンフーズの組織運営にとっては最も重要なのだろう。
畜産業者が規模拡大するにあたって厄介なのは用地確保である。前田も規模を広げる際、建設業者に設計図や見積書の作成を依頼した。しかし、なかなか請け負ってくれない。後で聞いたところによると、その業者は「規模拡大なんて無理」と関係業者への営業をしていなかったそうだ。また、地元の地権者らを対象に事業の説明会を開き続けたが、最初の3年間は1坪も購入することができなかった。こうした経験から前田は地域社会あっての畜産業であることに気づいたのだ。
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前田佳良子 マエダカヨコ
セブンフーズ(株)
代表取締役
1960年、熊本県大津町生まれ。尚絅大学短期大学卒業後、合志畜産(現セブンフーズ)入社。2004年、代表取締役に就任。熊本県農業法人協会副会長、熊本県指導農業士。
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