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海外レポート

米国食農紀行(1)貧困との戦い


「都市部ほど地場産食材を求める声は強まっている。だが、驚くべきことに、この辺りではこれまで新鮮な野菜がまるで手に入らなかった。デトロイト市の総面積は140平方マイルで、これはボストンとサンフランシスコ、マンハッタンがすっぽり入るほどの広さだ。そこで土地が余ってきており、おまけに水は豊富で食材を作る環境が整っている。農業で雇用を生み出すのに十分な可能性があると踏んだんだ」
訪米中に同様の活動をする他の団体も訪れたが、リカバリーパークが際立っていたのは事業計画の堅実さだ。ウォズニアックさんは30年間で7つの会社を起こして成功させてきた。仲間として募った他の社員は農家のミッシェルさんのほか、投資家や食品会社、コンサルタントなどで実務経験のある多彩な人たちである。彼らはかつての人脈を活かして農業や教育、エネルギーなどの分野で125に及ぶ企業や大学、非営利団体などとパートナー契約を締結。その協力を得て策定した事業計画で、初年度である今年度に投資額として300万ドルを集めた。
「僕は起業家だから、リカバリーパークの関連会社ではきちんと儲けが出るようにしたい。他の団体は助成金で成り立っていて経営の考えがなく、いわば慈善団体だ。それでは長続きしないし、本当の雇用は生まれない」
栽培形態で施設園芸を選んだのは、最も雇用が確保できると試算したからだ。1エーカー当たり5.2人の仕事を生み出せると見ている。
当面の販売先を高級レストランに限っているのはブランド化のためだ。同じ理由から小売店に売り込むことは一切せず、先方が取引を持ちかけてくるのを待っている。リカバリーパークファームが提示する値段どおりなら契約に応じる。5年以内に少なくとも18店舗のレストランと契約し、年間750万ドルを売り上げる計画を持っている。

水耕栽培で周年出荷

デトロイト市は冬期の冷え込みが厳しいため、栽培期間はその時期を除く10カ月間に限られる。ただ、冬場の雇用もつくりたいことから、ビニールハウスの横にあるハムの製造工場だったレンガ造りの建物で、水耕栽培による周年出荷も試みる。
その建物に入ると、薄暗く、まだ肉の生臭さがほのかに漂っていた。広い空間の中に水耕栽培の装置だけが置かれている。この翌週から稼働させ、まずはハーブを作るそうだ。この建物は集荷場としても機能させる。他の空き地にもビニールハウスを建て、収穫した農産物をここで一括集荷する。

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