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小川幸夫の虫の世界から見る農業

畑が招くヨトウムシ

秋になって困る害虫といえばヨトウムシだろう。漢字だと「夜盗虫」と書く。ヨトウムシは、春と秋に発生する厄介な害虫のイモムシだ。筆者の畑でも毎年悩まされ続けている。

食性が広く、大食漢

ほとんどの昆虫は通常、偏食で食べるものが決まっている。それによってすみ分けができるものなのだが、ヨトウムシの仲間は食性が非常に広い。アブラナ科のキャベツやブロッコリー、ハクサイ、コマツナなどをとくに好むものの、アカザ科のホウレンソウやキク科のレタスなど、さまざまな種類の野菜を好き嫌いなく食べてしまう。そして、大食漢なのが特徴だ。春と秋に何の対策も講じないで野菜を育てると、壊滅的な被害を与えられる。
ヨトウムシがおとなしい夏と異なり、発生時期である春と秋は葉物野菜の栽培時期でもある。ブロッコリーやカリフラワーといった食用部分が花蕾部の野菜は、ほんの少しかじられるだけで商品価値がなくなってしまう。ましてや、ブロッコリーの花蕾部の中に隠れていればクレームものだ。筆者は無駄にヨトウムシと戦ってきたが、近年は発生時期の栽培を避けるか、防虫ネットを使った防除に切り替えている。

代表的なのは3種類

ヨトウムシはヤガの仲間で、ヨトウガと呼ばれる種類がとても多い。しかし、畑の野菜を食べる種類は実に少なく、とりわけ被害を生じさせる種類の大半はヨトウガ、ハスモンヨトウ、シロシタヨトウの3つに限られる。ちなみに、卵も幼虫も成虫もそれぞれ特徴があるため、見分けることは可能だ。たとえば、ヨトウガの終齢幼虫を例に挙げると、ハスモンヨトウは成虫と同じように模様(紋)がきれいで、シロシタヨトウは気門に沿った白い線が目印になって判別がつく。とはいえ、これらヨトウムシたちの野菜の食害行動は酷似している。

ふ化して分散すると
手での捕殺は困難に

野菜のイモムシ害虫のほとんどがガの幼虫だが、モンシロチョウやキアゲハのようにチョウの幼虫も害虫として存在する。このチョウたちの幼虫は葉1枚1枚に丁寧に1個ずつ卵を産んでいくのに対し、ヨトウムシは1枚の葉の裏にまとめて卵を産み付ける。数は数百から多いときには1000個もの卵を1カ所に産む。
ヨトウムシは卵からかえると、まずその1枚を皆であっという間に食い尽くす。葉が透き通ったレース状になり、食べるところがなくなると食料を求めて他の葉へ分散する。この分散が始まると手での捕殺は困難になる。

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