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【小川幸夫の虫の世界から見る農業】
畑が招くヨトウムシ
- 小川幸夫
- 第10回 2014年10月27日
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食性が広く、大食漢
ほとんどの昆虫は通常、偏食で食べるものが決まっている。それによってすみ分けができるものなのだが、ヨトウムシの仲間は食性が非常に広い。アブラナ科のキャベツやブロッコリー、ハクサイ、コマツナなどをとくに好むものの、アカザ科のホウレンソウやキク科のレタスなど、さまざまな種類の野菜を好き嫌いなく食べてしまう。そして、大食漢なのが特徴だ。春と秋に何の対策も講じないで野菜を育てると、壊滅的な被害を与えられる。
ヨトウムシがおとなしい夏と異なり、発生時期である春と秋は葉物野菜の栽培時期でもある。ブロッコリーやカリフラワーといった食用部分が花蕾部の野菜は、ほんの少しかじられるだけで商品価値がなくなってしまう。ましてや、ブロッコリーの花蕾部の中に隠れていればクレームものだ。筆者は無駄にヨトウムシと戦ってきたが、近年は発生時期の栽培を避けるか、防虫ネットを使った防除に切り替えている。
代表的なのは3種類
ヨトウムシはヤガの仲間で、ヨトウガと呼ばれる種類がとても多い。しかし、畑の野菜を食べる種類は実に少なく、とりわけ被害を生じさせる種類の大半はヨトウガ、ハスモンヨトウ、シロシタヨトウの3つに限られる。ちなみに、卵も幼虫も成虫もそれぞれ特徴があるため、見分けることは可能だ。たとえば、ヨトウガの終齢幼虫を例に挙げると、ハスモンヨトウは成虫と同じように模様(紋)がきれいで、シロシタヨトウは気門に沿った白い線が目印になって判別がつく。とはいえ、これらヨトウムシたちの野菜の食害行動は酷似している。
ふ化して分散すると
手での捕殺は困難に
野菜のイモムシ害虫のほとんどがガの幼虫だが、モンシロチョウやキアゲハのようにチョウの幼虫も害虫として存在する。このチョウたちの幼虫は葉1枚1枚に丁寧に1個ずつ卵を産んでいくのに対し、ヨトウムシは1枚の葉の裏にまとめて卵を産み付ける。数は数百から多いときには1000個もの卵を1カ所に産む。
ヨトウムシは卵からかえると、まずその1枚を皆であっという間に食い尽くす。葉が透き通ったレース状になり、食べるところがなくなると食料を求めて他の葉へ分散する。この分散が始まると手での捕殺は困難になる。
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小川幸夫 オガワユキオ
大学卒業後に農業機械メーカーへ入るも、自身が思う理想の農業を目指すため、2001年に千葉県柏市の実家の農業を継ぐ。畑は1町5反、うち4反がビニールハウスで年間100品目の野菜を生産している。 20年前まで地元の市場に個選でネギを出荷していたが、ネギの価格が低迷したことを受けて自宅裏に直売所を設け、色々な野菜を作って地元の消費者に販売するようになる。現在は地元の百貨店や高級スーパーにコーナーを構えてもらっての販売のほか、大型直売所や年間200回以上の朝市での販売、また地元レストランをはじめとしたくさんの飲食店に野菜を供給している。
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