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岡本信一の科学する農業

新しい技術を導入する前にやるべきこと

本連載でも栽培技術には何度も触れてきたが、最近、危惧しているのは新しい技術の情報収集や導入ばかりに熱心なことである。もう少し、基本的な部分を見直せば、上手く栽培できるということについて書いてみたい。

栽培技術は基本に立ち返る
以外に向上の余地なし

植物は基本的に何もしなくても育つ。むしろ、何も手を加えないほうがよく育つこともあるくらいだ。特に露地栽培では、人間は作物の成長を手助けしているだけに過ぎない。それなのに、まるで自らが作物を育てているかのような勘違いが多いように思う。
播種してしまえば、ほとんど何もできないということに気づいている人は、露地栽培の農家でも意外と少ないのである。栽培期間中にいろいろな管理作業があるので、自らが育てているように感じるかもしれないが、残念ながらそうでもない。
プラスの影響を与えているのは施肥くらいだろうか。それも作物が必要としているタイミングで与えられた追肥に限定される。植物の生育ステージ、あるいは天候条件によっては与えるべきではない場合も、あまり考慮しないで追肥をしてしまうと、その施肥はマイナスに影響してしまう。
たとえば、生殖生長期(実を肥大する時期)に過度の窒素肥料を与えることで、倒伏や病害虫を招く要因を自ら作っていたりする。これは植物の生理を理解できていないことによる弊害だと思う。追肥の失敗は非常にわかりやすく、水稲の収穫時期を迎えた時期に、圃場全面で稲が倒伏している圃場もあれば、見事に黄金色の穂が実っている圃場まであることからもわかるだろう。
もちろん、多くの方は登熟の時期に窒素が効き過ぎると良くないことは知っている。でも、施肥をしないと減収するのではないかという恐怖から、どのような条件でも窒素肥料の追肥をしてしまうというわけだ。今年のように夏の登熟期が涼しく、天候不順な場合、窒素の追肥は特に注意が必要だ。天候や稲の条件が違うときにどうすればよいのかを理解していないために従来どおりの施肥を行なってしまうのである。

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