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土門「辛」聞

2012年産米を高値につり上げて崩壊に近づけた農協系統の米流通支配

市場未整備で起きた悲劇

質問 農家を落胆させた米価の急激な大幅下落。その原因は? 土門 全農と農協が高い概算金で集荷したことが高値競争を煽った。これが原因で米が高値で取り引きされるようになり、深刻な消費減退を招いたのだ。
質問 急激に下落したのはなぜか?
土門 全農県本部が高い概算金を示したことだ。全農秋田県本部(全農あきた)が、あきたこまち(1等・60kg)に示したのは、1万3500円。前年産比2500円高、率にして22.7%アップ。これに火を注いだのが、農協が独自に大幅加算して1万6000円で買い取り集荷に踏み切ったJA秋田おばこだ。
質問 米集荷で最大規模の農協だ。
土門 そうだよ。米どころ仙北平野で年間8万tを集荷する。コメ市況専門誌「日刊米穀市況速報」(東京)の2012年9月18日付け配信記事は「集荷奨励で独自加算、最大1万6000円(秋田おばこ農協)」と異常な高値での異常な集荷ぶりを克明に伝えている。
「秋田おばこ農協では、集荷奨励のため県本部の概算金にJA独自に800円を加算し、あきたこまち1等で1万4300円に設定している。また、『早場奨励集荷』として同19日まで1500円、20~23日まで800円を上記価格に加算する。別途、『契約達成奨励』加算として200円があり、最大で1万6000円となる。また、上記以外を対象に、カントリーなど施設加算600円(1万4300円+600円)もある。集荷目標は、加工用米などを含めて145万俵」
質問 この動きが火を注いだのか。
土門 あらためて米相場の神様、本間宗久(1724~1803)の格言を思い出したよ。
「米価がどんどん上がると、諸国で風説が出回り、相場はますます盛り上がる。そうなるとご用米買い上げの噂なども流れ、さらに上昇に加速がつき、自分も買わずにいられない。こんな時は、気持ちを切り換えて売りに回ることが大事。これはつまり、火中に飛込む思い切りで実行すべきである。相場全体が騒ぎ立っている時、人々が西に走るなら、自分は東に向かう。こうすれば大きな利運に乗れる」
質問 ご用米買い上げとは?
土門 1730年(享保16年)の「買米令」のことを指しているみたいだ。幕府が市場の米を買い上げ貯蔵して米価の引き上げを促すことだ。2012年産の場合は、全農や農協などになるのかな。それはさておき、同じことを戦前の米相場師が、「豊作に売りなし、不作に買いなし」という相場格言を残している。
質問 当時の需給状況は?
土門 相場上昇の素地はあった。11年産が、東北大震災で供給が減り、同年産の端境期(7月)の在庫水準が例年より40万tほど少なく需給事情がひっ迫していたこと。それが10年産の在庫水準も低く、スーパーや外食など大手ユーザーに契約数量を納入できない「欠品」という事態もあった。あれやこれやで、買いにますますドライブがかかったようだ。

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