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【津軽・黄金崎農業通信】
天候不順は気になりますが、これまでもこれからも乗り越えるべきものはそれだけではありません。
- (有)サンアップル醸造ジャパン 社長 木村慎一
- 第2回 1996年06月01日
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天候不順は気になりますが、これまでもこれからも乗り越えるべきものはそれだけではありません。
今年の天候は一体どうしたというのでしょうか。4月、5月は肌寒い日が続き、北国特有の5月のカラリとした青空が続く日がなかなかありません。農場の事務所から見通す世界自然遺産の白神山地は、例年に較べ緑を増す早さがゆっくりしています。農場本場のある深浦町の気象観測所によれば、平均気温は4月が平年を1・1℃下回り、5月中旬に至っては、9・5℃と平年より3・8℃も低く、観測史上最も低温の記録になるほどです。
例年6~7月に発生する日本海沿岸特有の濃霧が早くも5月下旬に農場を覆うなどしているのです。雨の日が多く、晴れ上がらずに乾燥しにくいため、畑に入れない日が多くなっています。幸い5月も終わる頃になって、気温はようやく平年を上回るようになり、ほっとしています。それでも、5月末現在の作業は例年よりも1週間以上遅れています。
しかし、契約栽培を基本とした農場経営からすれば、どんな気象になろうが、農産物を安定的に供給するのが使命なのです。
われわれのような400haを越える大規模露地栽培は、ハウスによる施設栽培や水が保温の役目を果たすコメ作りなどに較べて、不順天候に弱いのは事実ですが、それでも、少し高畝にする、明渠を作り排水対策を講ずる、そして、晴れて上が乾けば、可能な限りの労力を一気に投入して適期作業を行うなど、少しでも安定生産につながる対策はとるようにしています。
そもそも、深浦本場のこの土地は、風が強い、濃霧が発生する、上が痩せている、傾斜がある、など農作物の栽培条件としては、劣悪な条件でした。その悪条件をわれわれは強い意志と不断の努力で克服してきたのです。こうした農場作りの闘いの足跡はわれわれの友人の鳴海勇蔵氏(45)が著した「超大型農業を成し遂げた男たち」(筑波書房)に書かれていますが、これからも幾多の苦難にぶつかることは覚悟しています。
多くの人たちとつながる農場経営
小麦は農場で最も作付面積の多い作物です。担当する竹内雅孝(45)によれば、小麦の生育は1週間ほど遅れているとのことです。
昨年初めて植えた岩木山農場(昨年新規取得した岩木山麓の畑180haを便宜的にこう呼ぶ)の100haの小麦が雪の下から顔を出しだのが4月20日です。心配した雪腐れ病はそれほどみられませんが、昨年の種蒔き後、雨が続き発芽不良となったのが尾をひき、生育は今一歩です。それでも、まだ雪を抱く津軽の秀峰岩木山(1625m)と、小麦の緑のジュータンは見事なコントラストを見せています。
追肥はブロードキャスタで100haを3日ほどで済ませます。これまで2回追肥し、昨年までであればこれで終了ですが、今年は収量の確保と、製粉会社から要望のある高アミロース小麦生産のために6月上中旬に穂肥もやることにしています。小麦の背丈が高くなってからの作業はやりにくいのですが、なんとか工夫してやってみせると竹内は意気込んでいます。
小麦に次ぐ面積のバレイショは悪天候のはざまを縫いながらポテトプランターの能力と人力を生かして、どうにかして適期の5月半ばまでに植え付けを終えました。担当する佐々木君夫(46)は人と機械のやりくりにかなり苦労しました。植え付け面積は昨年並みの80haを確保しましたが、不順天候が続くだけに、なんとか無事に揃って出芽してくれることを願っています。
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木村慎一 キムラシンイチ
(有)サンアップル醸造ジャパン
社長
1950年、青森県生まれ。4Hクラブの仲間とともに76年、農事組合法人黄金崎農場(現・⑭黄金崎農場)を設立。88年、青森県青年農業士会会長に就任。2001年、青森県農業経営士会会長に就任。05年、黄金崎農場を退社し、⑰サンアップル醸造ジャパンを設立。07年、ウクライナで大豆栽培に携わるも、11年に撤退。12年、ミャンマーとロシア(ウラジオストク)で農業指導に当たる。
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