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数字はさまざまなことを教えてくれる。1品当たりの加工時間が長くなったりロスが増えたりしていれば、機械に不良があるのではないかと気付くことができる。売上げが増えてないのに残業代が増えていたら、利幅の薄い特注品の受注が増えているのかと考えることができる。
そういう異常があればすぐに現場に問い合わせ、対策を打つことができる。数字を通して会社の状態を把握していればこそ、適切なタイミングで設備投資ができるし、採用計画も立てられるのだ。
しかし、町工場にはちゃんと数字と向き合おうとしない経営者は多い。おそらく、経営が成り立ってない現実に直面するのが怖いのだろう。決算も税理士に丸投げにしてしまう。そこで利益が出たとなると、税理士から連絡がくる。何か買ってぎりぎりの黒にするか赤字にして節税しましょうということになって、会社の実態がわからない財務諸表にしてしまう。雇用と納税は経営者の使命なのに、そういうことをする。
すると、結局何年経っても内部留保は足りないままということになる。これでは機械の更新ができないし、自社独自の製品も技術も育ちようがない。日本の町工場がどんどん減っているのは、そういうところにも原因がある。倒産というより、経営者が投げやりになってやめてしまったというケースが少なくない。
この話を聞いて耳の痛い生産者もいるのではないだろうか。私の妻の実家は農家だ。それで田舎を訪ねるたびに、私は驚いている。まだ何年も使えると見ていた農機が、次に行ったときにはピカピカの新品に替わっているのだ。町工場で使う機械はほとんど毎日稼働させるが、農機というものは年間を通じて何時間も稼働させるものではない。そんな金を生みにくい代物をなぜコロコロ入れ替えるのか、そもそもどうしてそれが買えるのか、本当に不思議だ。
退場する町工場の社長と同じく、数字を見て経営を考えようとしない農家は多いのだろう。
【いつもチェックする数字を決めておけ】
当社の仕事は、小型自動旋盤の部品、特に金属材料を固定するコレットチャックの製造・販売がメインだ。そして切削工具の再研磨にも乗り出し、ここで溜めたノウハウで切削工具の製造も始めている。
注文を受けて、材料を加工し、納品するという意味では下請けだが、他社との競争のために価格を下げたことはないし、値切られて応じたこともない。それができるのは、納期を短縮する体制を追求し、胸を張って適正価格を打ち出しているからだ。それができるのも、自社の状況を数字でしっかりと把握しているからこそだ。
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