ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

我が家の農産物の原価はいくら?原価計算・経営分析の意義と活かし方


目論んだ利益が常に確保できるとは限らないし、価格の高騰や原価割れは、需要と供給のバランスが崩れたときに起こる。競争に勝つためには、農産物の付加価値を高めることと、生産コストを低減することが命題となる。
読者の多くは、すでに自ら販売単価を決め、勝負をする農業経営者が少なくないであろう。農業経営のなかで原価を求める意義は、今年のコストはどうであったかという経営結果を分析する意味合いが強い。1年を生産期間の一区切りとして、生産物の販売結果を反省しつつ、次年度の計画を練るためのバロメーターとして有効に活用できるからである。
しかし、昨今は原価分析があまり行なわれていないように感じてならない。背景には助成金に価格が下支えされる農産物が多いことや、複合経営の場合では間接費の割り振りが複雑なこともある。会計ソフトで部門ごとに管理をして、間接費を詳細に割り振りするだけでも、経営の実態を把握し、これからの経営に役立つ情報が得られるのだが。
ここでは原価を求めて、分析する重要性を再確認し、今後の経営戦略に活かすための「原価を求める手法」を紹介する。少し難しいと感じる方も多いと思うが、ご容赦願いたい。

【全参入生産費は全国共通の物差し】

「全算入生産費」――緑・黄・赤の政策から戸別所得補償制度が施行されるに至り、耳にする機会が増えた言葉である。実際に自ら算出している経営者は日本中を探しても少ないことと思う。
図1に全参入生産費を求めるまでの流れを示した。
まず定義から説明する。家族労働費を含む労働費と肥料代金などの物財費とを足し合わせたものを「費用合計」と呼ぶ。その費用合計から副産物価額を差し引いた残りが「生産費(副産物価額差引)」である。それに支払利子、支払地代、自己資本利子、自作地地代を加えたものが、「全算入生産費」である。
一般に生産費という場合には、この全算入生産費を指すことが多い。作物部門別に「10a」「60kg」といった単位当たりで算出される。農林水産省の統計として長年調査が続けられており、農政立案の基礎データである。全国にモニターがいて、主要作物すべてのデータが年次別に全国、都道府県別の平均値として発表される。各々の経営できちんと算出できれば、経営戦略に役立つ全国共通の物差しといってよい。
普及員時代に私も試験場の研究員と一緒に、この算出値を活かす経営分析や原価分析をある地域で行なったことがある。第一ステップは簿記記帳の仕訳と作業日誌などから、手順を決めて整理すること。次に、共通経費などは面積や労働時間の比率で案分する。作目別で済むものと、面積や作業量別に案分が必要なものが出てくる(図2)。表計算ソフトを利用すれば、入力に骨が折れるが、算出は容易である。    

関連記事

powered by weblio