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イチゴ狩りの季節にチラシを渡せば、田植えの前にお客様を増やすことができる。松江市内や出雲市に加えて、隣接する鳥取県米子市までは、農場まで1時間かからずに来られる。それだけでも商圏としては十分な人口があり、さらに広島や岡山までも数時間で移動できる近さだ。
現在は米卸ないしは商系の集荷業者との取引が中心だが、お客様へ直接販売する機会の拡大も見込んでいる。おいしいものを求めて、お客様が移動してくれる時代になり、情報発信に努めたいと意気込む。
イチゴ栽培は、カンドーファームの新しい一歩でもある。立ち上げた当初から田尻が抱いてきた農場のイメージはこうだ。
「お客様に遊びに来ていただける農場にしたい」
立ち上げ当初はスタッフも少なく、実現できる環境にはなかった。ある程度、水稲部門が軌道に乗り、計画通りに順調に作業が進められるという状況に安定してきた今、やりたいことを始める時期だと一念発起したのだ。合理的に作業を進めてきた「がむしゃらに働く時期」からの転換を迎え、夢の実現に注力できるお金も時間も、体力がついたことを実感している。
ちなみに、イチゴのハウスは補助金、助成金の類は受けていない。稲作部門では戸別所得補償をはじめとする助成をもちろん受けている。それがなければ、経営を維持するのは厳しい。しかしながら、補助金の仕組みに合わせて作付けを考えるだけでは、面白くない。満を持して取り組み始めた理由は、人が介する経営でありたいからである。
水田の管理ひとつで
地域の景色が変わる
田尻には10歳になる1人娘がいる。親から子へ、農業も未だに世襲で継ぐケースは多い。その慣習を打破するかのように、父から田んぼは引き継いだが、経営委譲を受けずに独立し、会社としてあるべき形を追いかけてきた。法人化したのも娘が継がなくてもいいように、魅力的な会社にしておきたかったからだ。
農業機械の話題や栽培技術の習得にも熱心だった田尻が最近関心を持って参加しているのは、地元の中小企業の経営者らの集まりだ。昨冬から通い始めた勉強会では、従業員が50人ほどの社長から、社長兼プレイヤーという経営者まで業種を超えて参加者と交流を深めている。
経営の勉強会に顔を出すようになったきっかけは、スタッフの雇用が長続きしないことにあった。年齢層は20代半ば~30代半ばが多く、2年ほどで辞めてしまう。技術を蓄積できずに、また一から教えなければならず、次の募集をかけても、農業の経験があるという応募者に、会話がスムーズにできる人は少ない。
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田尻一輝 タジリカズテル
カンドーファーム(株)
代表取締役
1976年島根県松江市生まれ。工業高校電子科を卒業後、サラリーマン生活を経て、20歳で実家の稲作・ブドウ栽培を手伝い始める。2002年頃に父の経営から独立。08年にカンドーファーム(株)立し、父の水稲部門を法人で引継ぎ、代表取締役に。事業内容は、水稲約60ha・イチゴ13aの生産・販売。
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