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編集長インタビュー

著書『スマート・テロワール 農村消滅論から大転換』上梓に際して伝えたいこと



輸入されている食材の
加工食品に勝つ

昆 我が国の食品産業は輸入穀物を原料にしていて、それが結果として食料自給率を下げていますね。たとえば、醤油や味噌に使う大豆は輸入されています。「スマート・テロワール」が構築されることによって、農産物は一定の価格を維持しながら、輸入原料を使っているナショナル・ブランドと比べ、安い加工品を提供できるということですが、それはどうしてですか。
松尾 カルビーは、農家から高く買って消費者に安く売るということをしてきました。なぜ、それができるか。簡単なことです。コストの90%は物流費なのです。原材料費の中身はほとんどが物流費です。人件費に見えますが、物流費です。したがって、遠くに持っていくよりも近くに持っていくほうが安いのは当たり前でしょう。近くであれば、農家から高く買って、消費者に安く売ることは極めて簡単なことなのです。そのうえで、その消費規模に合った工場を持って、一番安いコストでつくれるようになればいいわけです。そして、地域限定というブランドをつけて、「ナショナル・ブランドより3割安くしますよ」とすればその地域の人に買ってもらえます。
昆 醤油や味噌は、もともと日本各地でつくられてきましたよね。
松尾 小さいですけど各地域にありますね。一般市場で販売している醤油屋は全国で400軒あるそうです。業務用で醤油をつくっているところを含めると1000軒だそうです。ナショナル・ブランドを買っていた消費者が、地域の醤油を買うようになれば、設備の操業度が上がるので原価が下がります。消費者に安く売れるわけです。工場の製造能力以上に消費がある場合はもうかります。安い、おいしい、もうかる。これがカルビーの不敗神話ですね。価値があるから高くして認めてもらおうというのは、ものづくり屋さんの失敗の始まりですね。
昆 いまの農業もそうですね。産地ブランドはみんなどうやって高く売るか考えていますよね。
松尾 原料にしても、市場の農産物にしても、加工食品にしても、相場があるんですよ。それより高くしても売れません。
昆 松尾さんは常々、現代において農業の成長は加工業が成長しない限りあり得ないとおっしゃっていますが。
松尾 いまから40年前は家庭調理の割合は3分の2でした。いまは3分の1になっています。代わりに増えたのは加工食品と外食です。生産者はそこに供給しないと、辛い競争になります。家庭調理で使う生鮮野菜やお米の供給量はフルですから。その中でもユニークな仕事をしている人はたくさんいて、マスコミはそれを称えますね。でも、それは国内の農家の同士討ちで勝っただけです。外国の農家と戦って勝ったわけではないですね。

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