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【江刺の稲】
農業イノベーションを我々の手で実現させよう
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第224回 2015年01月14日
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何度も申し上げているとおり、日本人一人当たりの一日のカロリー摂取量は、1971年に2287キロカロリーでピークに達し、2004年で終戦翌年(1946年)の1903キロカロリーを下回る1902キロカロリーまで落ち、さらに2010年には1849キロカロリーという終戦時に日本人が餓死するといわれたレベルを下回っているのです。
この変化は、単にコメのマーケットの変化だとかコメの消費量の減少などというより、文明の転換というべき変化なのです。人間は有史以来、 “欠乏の歴史”の中にいました。しかし、我が国では1970年前後を境に、“欠乏(空腹)”の病理に苦しむ歴史段階から、むしろ“過剰(満腹)”を原因とする病理にさいなまれる時代に変わったのです。それは、当然のことながら農業の在り様に変化を要求します。同じような変化を遂げたヨーロッパでは70年代、80年代を通じて農業政策を変化させてきました。しかし、我が日本の農業政策は、産業界の成長に寄生する形の保護農政を続け、農業界は自らの改革を怠り、保護政策の安楽の中で惰眠をむさぼってきたのです。しかも、ソビエトロシアの失敗を例にするまでもなく、成長した社会では官による過剰な支配はむしろ産業や人々のモラルを下げてしまうのです。
でもそれを求めたのは農業団体でしょうか、バラマキで農民を釣る政治家たちなのでしょうか。「問うべきは我」ではないでしょうか。
コメの、そしてあらゆる農産物の生産で我が国と諸外国との面積規模の差を語り、自らの弱さを語り、それゆえの保護を求める敗北主義を利権化することはもうやめましょう。我々には日本ならではの生き残り方があるからです。
稲作といっても欧米では畑作と同じけん引式の作業機を使います。我が国で標準的なロータリーハローなどの駆動型作業機に比べ3~5倍、あるいはそれ以上の高速作業が可能です。本誌読者の一部は畑作技術体系での水田作業を当たり前のものにしています。さらに、子実トウモロコシ生産を行ない、物流コストをかけずに地域の飼料自給を進めれば水田農業にも畜産・酪農にも未来が見えてきます。コメの消費量は800万tでも、我が国のトウモロコシ需要量は最大で1600万tまであるのです。
この変化は、単にコメのマーケットの変化だとかコメの消費量の減少などというより、文明の転換というべき変化なのです。人間は有史以来、 “欠乏の歴史”の中にいました。しかし、我が国では1970年前後を境に、“欠乏(空腹)”の病理に苦しむ歴史段階から、むしろ“過剰(満腹)”を原因とする病理にさいなまれる時代に変わったのです。それは、当然のことながら農業の在り様に変化を要求します。同じような変化を遂げたヨーロッパでは70年代、80年代を通じて農業政策を変化させてきました。しかし、我が日本の農業政策は、産業界の成長に寄生する形の保護農政を続け、農業界は自らの改革を怠り、保護政策の安楽の中で惰眠をむさぼってきたのです。しかも、ソビエトロシアの失敗を例にするまでもなく、成長した社会では官による過剰な支配はむしろ産業や人々のモラルを下げてしまうのです。
でもそれを求めたのは農業団体でしょうか、バラマキで農民を釣る政治家たちなのでしょうか。「問うべきは我」ではないでしょうか。
コメの、そしてあらゆる農産物の生産で我が国と諸外国との面積規模の差を語り、自らの弱さを語り、それゆえの保護を求める敗北主義を利権化することはもうやめましょう。我々には日本ならではの生き残り方があるからです。
稲作といっても欧米では畑作と同じけん引式の作業機を使います。我が国で標準的なロータリーハローなどの駆動型作業機に比べ3~5倍、あるいはそれ以上の高速作業が可能です。本誌読者の一部は畑作技術体系での水田作業を当たり前のものにしています。さらに、子実トウモロコシ生産を行ない、物流コストをかけずに地域の飼料自給を進めれば水田農業にも畜産・酪農にも未来が見えてきます。コメの消費量は800万tでも、我が国のトウモロコシ需要量は最大で1600万tまであるのです。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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