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【土門「辛」聞】
『雪だるまパンフ』の向こうに『借金だるま』が見える
- 土門剛
- 第23回 2006年04月01日
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行政・農協の努力空しい閑古鳥無く 集落座談会の冬景色
その原因を手繰っていくと、そもそも「品目横断的経営安定対策」という新たな助成金をエサに、農家を集落営農組織に囲い込み、減反を強制させる行政手法が、農家に胡散臭く思われたようだ。説明不足も政策不振に拍車をかけた。東北の某県でのエピソードを紹介する。
商人系業者の集まりにやってきた農政事務所課長氏は、冒頭に「質問はご勘弁願いたい」と断りを入れて品目横断的経営安定対策を説明した。通称「雪だるま」パンフを棒読みするだけで、時間が来たらサッサと帰っていったという。おそらくは「品目横断的経営安定対策」と「集落営農組織」の有機的連関をまるで理解されていないが故にパンフを棒読みしかできないということであろう。どの農政事務所?。ヒントは、筆者のお気に入りの「雪漫々」の蔵元がある県で~す。今シーズンの講演行脚、そんなお役人の説明の後を受けての出番というシーンが2回ほどあった。おかげでお役人による説明不足を補わせていただくことができ、聴衆の皆さんにとても喜ばれた。その講演を誌上で再現してみよう。
きっかけはフジテレビ~、ではありませんが、農業大激変ドラマはWTO農業交渉大敗北で始まるのです。大本営発表報道ばかりで、交渉の実態がまるで伝わってきませんが、ニッポン農業がテーブルごとひっくり返ってしまうような大敗北を喫しつつあるのが実情です。農水省のキャラバン隊は、そのことには触れず、いきなり「品目横断的経営安定対策」や「集落営農組織」を説明するわけですから、皆さんがチンプンカンプンになるのは当たり前なのです。
この交渉は農産物の関税大幅引き下げが焦点です。わが政府は、交渉スタンスとしてEU(欧州連合)を味方につけ、米国など輸出国が求める関税大幅引き下げを防ぐ作戦をとりましたが、これが大失敗。そのEUに逃げられてしまったのです。2001年11月のことでした。カタールの首都ドーハで開かれた閣僚会議で、こともあろうに敵であるはずの米国と妥協してしまったのです。その後は、米国とEUは妥協を繰り返し、これで超低率関税への道が開かれたのです。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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