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江刺の稲

鶴巻義夫氏の批判と問いに対して

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第122回 2006年04月01日

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先月号の当欄の記事に関して、新潟県の鶴巻義夫氏からご批判の電話を頂いた。「北陸研究センターでの遺伝子組換え稲の野外圃場実験」への反対運動を批判し、実験の必要性を語った。その筆者への批判である。
 運動の中心人物である同氏は、筆者の遺伝子組換え技術に関する意見を了解しており、否定もしない。しかし、新潟県で有機農業に取り組む者、有機農業で事業を営む者の死活問題として、北陸研究センターでの野外圃場実験に反対せざるを得ないことへの理解が欲しいと話された。 

 同氏は、遺伝子組換えという領域に人は踏み込むべきではないという哲学的信念を持つ。それでも、やがてそれがあたりまえになる時代も来るだろうとも予測しておられる。

 しかし、遺伝子組換え技術が持つリスクの大小を語ることや、筆者が言う日本のコメ農業発展の戦略的必要性があること以前に、現在、有機農業で事業をする者への営業妨害の問題にどう答えるか、と問われた。鶴巻氏の顧客とは、農薬使用を忌避し、遺伝子組換え技術に対する不安を抱く人々。顧客に選ばれ、必要とされてこそ我々の仕事は在り得るというのが、鶴巻氏だけでなく筆者にとっても共通の理念である。鶴巻氏のことは、筆者自身が本誌「経営者ルポ」(1998年6月号)で「顧客に試され、お天道様に裁かれる」というタイトルで紹介している。

 同氏は、我が国の有機農業運動を草創期から育てきた実践家の一人。産直という言葉も無い時代からそれに取組み、たぶん、我が国の農業者の中でも、もっとも早くに顧客あるいは食べる者の存在を自覚した農業者の一人だろう。その求めに応じてこそ自らの農業経営があることを自負とし、それを実践してこられた。かくあるべきと思う経営者、そして人としての在り様を体現しておられる、筆者が尊敬する方である。

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