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編集長インタビュー

日本の自然を守っているのは第一次産業である

立松和平氏は一貫して日本の農村文化や農的なライフスタイルに、強い関心を向け続けてきた作家である。デビュー作の『遠雷』には宇都宮の郊外で、農村に押し寄せる都市化の波と、それにともなう価値観の崩壊を間近に見ながら育った自身の体験が色濃く反映されている。国内外に旺盛に旅をする行動派の作家である氏は、自然環境保護問題にも積極的に取り組み、足尾のはげ山に植林を行ったり、知床ではナショナルトラストの植林運動にも関わっている。そんな氏が見つめてきた農村と農業の変化について話をうかがった。

『遠雷』から四半世紀、変化した農村の光と陰

昆吉則(以下、昆) 立松さんの『遠雷』を読んだのは、20年以上前、私が農機具の業界紙に勤めていたころでした。機械化と都市化の波の中で揺れる当時の農民の姿がよくとらえられていると感心しました。そのころと現在の農業や農村を比べて、今どのように感じていらっしゃるのでしょう。

立松和平(以下、立松) 今の農業は私が『遠雷』を書いたころとは全然違っています。当時は、押し寄せる都市化の波をどうやって乗り超えていくかというのが大きな問題でした。でも、食管法などもあって、農業は守られていた。しかし、今は生産調整が行われて4割減反といった状況の中で、どうやって農業を守っていくか、そう考えると極めて難しい。

 大規模農業をする、あるいは生産性の高い農業を目指すという方向もあるとは思います。先日も北海道の知内でニラを栽培している農家を取材してきたのですが、そこでもコメからの転作に成功したところは豊かになっています。逆に失敗したところは、非常に辛い状態にありますね。

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