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今月の数字

ダイオキシンによる発ガンで縮まる日本人全体(0歳)の平均寿命

米国産牛の輸入再禁止問題をめぐる日米局長級会合で来日したJ・B・ペン米農務次官は1月24日「BSEのリスクは交通事故より低い」と発言した。輸入再開の条件となっている契約を守らない側が、謝罪の場で言うことが適切かどうかは別にして、この発言の中身については、事実だと思う。
1.2日

 米国産牛の輸入再禁止問題をめぐる日米局長級会合で来日したJ・B・ペン米農務次官は1月24日「BSEのリスクは交通事故より低い」と発言した。輸入再開の条件となっている契約を守らない側が、謝罪の場で言うことが適切かどうかは別にして、この発言の中身については、事実だと思う。

 リスクを定量的に評価するときには、どの分野においても、一般的に、次のように定義される。

リスク=発生確率×発生したときの影響度

しかし、ダイオキシン、BSE、…などについてリスクが語られる際には、「発生確率」だけを取り上げることが多かったように思う。しかも、発生確率の中に、たまに死亡率も紛れ込んでいたりして(死亡率が高いものは別として、厳密に考えると死亡率は影響度を含んだ数字だと考えられる)、一層話をややこしくしていた。例えば、ダイオキシン問題がセンセーショナルに報道されると、がんの発生率もわからない先から風評被害が出る一方で、BSEのリスクが低いと言われてもゼロリスクを求めてしまう。
 最近では、環境リスク学の第一人者である中西準子氏(横浜国立大学教授)により、健康リスク分析に使われている「損失余命」という考え方が導入されている。損失余命とは、ある原因でどのくらい日本人全員の平均寿命が縮まるかを年齢別の死亡率から出したものであり、発生確率と影響度の両方の要因を含むと考えてよいだろう。これを見ると、あれほど騒がれたダイオキシンによるリスクは、余命損失1.2日である。肝心のBSEについては余命損失に関する記述が少ないが、発生確率がほとんどない(1億2500万人に1人と言われている)のに対し、発生した場合の対処法がないことから余命損失は高くなっている。それでも他の事象に比べてリスクは低いと言える。

 万能ではないかもしれないが、影響度やリスクに関する不安要因を含めたわかりやすい指標であり、コミュニケーションの道具として適しているかもしれない。

(松田恭子)

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