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土門「辛」聞

認定農業者に減反遵守要件がある怪

 その説明を受けて思い出したのは、先ほどのO弁護士の「農水省の役人は、法治国家であるのに、時として法によらない権力の行使をする。卑劣なのは相手が弱いとみたときにやる」という言葉だ。

 その担当者に法的な問題点を次のように指摘しておいた。

「雪だるまパンフにも、生産調整に取り組んだときのメリット措置の説明がある。農林漁業金融公庫の低利融資とか、機械や施設の減価償却費の割増計上のことだ。これらメリットを挙げるには確たる法的根拠がないと認められないはずだよ。その法的根拠が、農業経営基盤強化促進法というのは、どうみても納得できない。この法律は『効率的かつ安定的な農業経営を育成』が目的のはず。生産調整に取り組むことがその法目的にかなうとは思えない。何よりも憲法は、法の下の平等と営業権の自由を高らかに宣言している。合理的な根拠もなく、生産調整参加者に税制上の恩典を与えることは絶対に認められない。それと認定農業者に減反要件を義務づけたプロセスが実に不透明だ。いかなる手続きを経てこのような条件を付けたのか、納得できる説明が欲しい」

 担当者には文書での回答を求めておいた。やおら雑談になり、大阪弁バージョンで「これは、法網をかいくぐるホリエモン的法運用と同じやな」と言い放つと嫌な顔をしていた。

 話は減反問題の核心に及び、筆者が「へぇ、減反を守ることがどうして経営改善と認められるのか」と聞いてやると、しばし呼吸をおいた後に「減反を守ってもらわなければ米価は下がり、農家の経営改善につながりません」との答えが戻ってきた。これには思わずプッと吹き出しかけたが、気を取り直して「それじゃ、減反を30年以上もやって、達成率100%を続けてきたのに、なぜ米価がズルズルと下がったんですか」と聞いてみようと思ったが、やめてしまった。担当者の態度が実に誠実だったからだ(浮き世の義理でこんなこともあります)。

 その代わり嫌みな質問をぶつけた。

「認定農業者は、減反を守らされているわけですから、当然、経営改善していることになりますね。でも実態が違うのではないでしょうか。例えば、大半が認定農業者であり、減反をやってきた全国稲作経営者会議のメンバー約2200人のうち、8割は赤字スレスレというではありませんか。先の説明のように、決して経営改善しているとは思えません。それどころか米価が500円から1000円も下がれば、アッという間に赤字転落してしまいます。減反をやれば、経営改善できるというのは、どのような根拠に基づいてお話をされているのですか」

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