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土門「辛」聞

認定農業者に減反遵守要件がある怪

 その担当者は黙って聞いておられた。稲作の場合、認定農業者イコール減反参加イコール赤字という恐怖の方程式が厳然と存在する。担当者に最後っ屁的質問を放っておいた。

「認定農業者になれば、農林漁業金融公庫のスーパーL資金(農業経営基盤強化資金)を借りることができたり、税金の面で優遇措置を受けることができたりしますね。ところが認定農業者ほど、税金は払っていない。いや正確に言えば払えないような貧乏なケースがあまりにも多いと聞いています。国の役人として、税金も払っていない人に制度融資や税の面で優遇措置を講じるとはおかしいとは思えませんか。国家財政危急の折、こんなことは絶対に許されない話ですよ」

 同じようなことを財務省からも言われているらしい。むべなるかなである。


貸しはがし

 農水省を廊下鳶とんびしていたら、総合食料局のS課長にバッタリ出会った。もう20年近い顔なじみで、ときに農政の神髄に触れる話を拝聴させてもらっている。時節柄、集落営農の話題になり、ご自身が集落営農推進キャラバン隊で「巡業」してきた時のエピソードを開陳された。

 集落営農推進キャラバン隊とは、悪評、不評さくさくの集落営農を農家に理解してもらうため、課長級以上の優秀な幹部を選出、行政や農協関係者などに制度の説明や説得をしたりする宣伝隊。S課長は、かつての出向地であった東北F県担当に指名されていたのである。

 前ポストの大臣官房参事官時代、S課長は「集落営農で農地貸しはがしが心配だ」ということを耳打ちしてくれたことがある。記事にせよという意味だった。事実、S氏が指摘した「貸しはがし」が各地で起きている。これはとても由々しき問題である。農水省は、例の雪だるまパンフで「これまで規模拡大を図ってきた認定農業者等の規模拡大努力を阻害すること(いわゆる「貸しはがし」)のないよう、地域の関係者間で十分に話し合いを行うことが重要です」と記述してあるが、行政や農協はそんなことお構いなく天真爛漫に貸しはがしをやっている。

 おそらく「貸しはがし」の被害を受けている本誌読者は多いのではないだろうか。S氏には、「さすが農政のプロ。あなたの心配が現実のものになりましたよ」と言ったらキョトンとしておられた。

 それはそれとして、認定農業者の話題を持ち出し、「減反を条件とした認定要件をつけたのはおかしい」とかみついたら、S氏は「高齢者が増えてコメの消費も減っています。減反に取り組んでもらわないと米価は暴落しかねません。したがって減反を条件付けたことは間違いありません」と説明した。そこで前述のとおり「でも法律手続き的には少し問題あるのではないか」と突っ込むと、ぶっきらぼうに「訴えたら」と答えてきた。

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