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ここまで言われれば、いやはや将来の総裁候補も形無しだ。
さらに笑ってしまうのは、部下に「無能」と思わせるようなことを言われながら、ヘラヘラと言い訳会見しかできぬ中川農水大臣の「存在の耐えられぬ軽さ」である。
FT紙を読んで、とっさに思い出したのは、今から12年前の中川氏との出会いだ。それはウルグアイ・ラウンド農業交渉が終盤を迎え、テレビ朝日系列の討論番組「朝まで生テレビ」で、自民党農政族の若手論客として参加した中川氏と共演したときのこと。当然、筆者は関税化賛成の立場。中川氏は、当然、「一粒たりともコメは輸入させない」とぶっていた。
番組中、そんな中川氏に、「もしコメが輸入されるようなことになったら、あなたは農政族議員としてどう責任を取るのか」と、少々嫌みな質問をぶつけてやった。中川氏は間髪を入れず「丸坊主になります」と威勢良く答えてきた。
ウルグアイ・ラウンド農業交渉は市場開放でほどなく決着したが、中川氏がその時の約束を守って丸坊主にするということはなかった。
経済産業大臣の時は自由貿易推進を口にし、農林大臣になれば前言を翻し逆のことを主張する。ニッポンの悲劇はこの程度の人物でさえ将来の総裁候補としてもてはやされることだ。そしてこの程度の人物がコミットするWTO農業交渉の先行きは決まっている。
MA増枠でお茶を濁し、農業改革に何も手を付けられず、日本農業を農協と抱き合い心中させる悪夢の実現である。彼が何もできないのは、自民党が大勝した昨年の総選挙結果をみれば一目瞭然だ。
中川氏は、民主党の若手候補に2万票差(中川氏の得票は10万7千票)まで追い込まれた。それまではほぼダブルスコアでの大差での勝利。選挙に弱くなった中川農水大臣を見ていて、ふと思い出したのは中川氏の父、農水大臣を務めたこともある故一郎氏だ。大臣時代に、将来の農政を見据えて乳価を抑えて、畜産農家から生乳をぶちまけられたことがあった。
その息子は、生乳をかけられても初志貫徹する見識や気概はあるのだろうか。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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