記事閲覧
そうはいっても、農業の制度融資は融資する際の貸出金利が低いため、融資の資金を調達する際の金利との差が小さく、利ザヤで融資の窓口への手数料や運営費を賄うことができません。このため、国民の税金(補給金)を使っているのが現実です。しかし、民間が参入しづらい低利での長期資金の政策効果について透明性のある説明責任を果たせば、制度金融という機能役割の存続意義はあると考えています。
農業は事業として脱皮をすべき
昆 最近では融資を受けていながら経営危機に陥っている農業法人が出てきているようですが、そのような場面では、制度融資が失敗した経営の延命策になってしまう恐れがあるのではないでしょうか?
髙木 (社)日本農業法人協会には経営不振が出たときにアドバイスができる人たちを用意しておいてくれと言ってきました。現在ではアドバイザーのリストも整備されてきています。お話のような場合、今までの経営者は責任をとってやめてもらい、経営陣を一新する。私はそれを甘やかしだとは思いません。せっかく集積した農地や地域での雇用の場をつぶしてよいのでしょうか。法人協会のアンケート調査では、経営不振が出たときに他県であっても経営資源を継承して経営に参加しても良いと答えた農業法人がかなりいます。大きくなった経営資源をそのまま有効に利用することは事業再生の一つです。そこにモラルハザードや甘えを生む余地が出てはいけませんが、経営資源を再生するシステムを作っていく取り組みはこれからの我々の重要な役割だと考えています。
昆 最近ではトヨタやリクルートが他業界に対してコンサルティングをおこなっています。農業分野でも他産業から入ってきてもらうことが必要ではないでしょうか?
髙木 農家の大多数は兼業農家という環境の中で、次世代の農業経営者は仲間がいないんですね。経営のノウハウは自分の経営の中で学ぶしかないというのはおかしな話で、農業の中だけではなく、もっと広く、トータルなシステムとしてやらなくてはいけないと思っています。本当は法人協会がこのような役割をやれば良いのです。法人協会には今後もっと政策提案をしてほしいと期待しています。しかし、協会の年会費は1法人当たり年3万円で、協会として自ら活動するためには資金的に限られています。
昆 それは協会に参加することで何らかのメリットが享受できれば、という意識しか持っていない法人がいるからではないでしょうか。法人協会でさえまだ行政が何かをやってくれるだろうと、農民団体の域を脱していないところがありそうですね。
会員の方はここからログイン
髙木勇樹 タカギユウキ
農林漁業金融公庫
総裁
昭和18年2月群馬県生まれ。昭和41年3月東京大学法学部卒業後、同年4月農林省入省。畜産局長、官房長、食糧庁長官などを歴任後、平成10年7月から平成13年1月まで農林水産事務次官。農林水産省退官後、株式会社農林中金総合研究所理事長を経て、平成15年10月農林漁業金融公庫総裁に就任し現在に至る。
編集長インタビュー
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)