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【女化通信】
土壌鎮圧で発芽を良くする
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第5回 1996年08月01日
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麦後にニンジンを播いた
一昨年から昨年にかけて大豆→バレイショを輪作し、今年の冬作に麦を作った高松さんの80aの畑は、府県での「畑作経営」を考える経営実験の場所としてこれまでにも何度か取り上げてきた。この畑は長辺が約200mで幅が40m弱の形の良い圃場であり、圃場の中間にトラックの通れる作業道を作るようにしている。今年は冬作の麦収穫後のワラを鋤き込んで、大豆(約60a)とニンジン(約20a)を播いた。ニンジンは幅10mで長辺 200mの20aである。手前の約20mと奥の10m程度は屋敷林の日陰になるが、風の被害は受けにくい。今回はこのニンジンについて報告する。
ニンジンは生食用として出荷するが、加工用として出荷しても見合うような低コスト・省力・多収を目指す。播種はトラクタでコート種子を1粒播きにし、間引きはしない計画である。また、関東の夏に播くニンジンは発芽率が悪いといわれるが、その発芽率の改善方法として「鎮圧」を重視した砕土整地と播種の工夫をしてみた。その具体的手段としては、砕上整地に鎮圧ローラ付き縦軸ハロー(商品名=パワーハロー)を使い、土の軽い火山灰土壌での過剰砕土防止と鎮圧効果を試した。さらに、播種後には高松さんが麦踏みに使っている自作のローラーで播種後鎮圧をした。
土壌消毒は必要ないだろう。この畑では麦、大豆を中心とした輪作をしてきており、バレイショもニンジンとは相性が良いはずだ。土壌消毒に頼る体質になれば、土の力に依存すればこそ低コスト化する畑作経営の基本を見失うからだ。輪作や施肥への配慮などで土壌障害は未然に防げるし、それによってこそ省力的で高収量の畑作野菜経営が可能なのだと考えるべきだ。土壌を酷使して収益を上げるのは「畑作的経営」ではない。難しい技術では駄目なのだ。
高松氏が売り物としてニンジンを作るのは今年が初めて。播種は、これまで麦にはドリルシーダ、大豆の場合には歩行型の播種機を使ってきた。ニンジンを始めるにあたって高松さんは、麦、大豆を含めニンジン等の直播の野菜にも共通して使えるトラクタ播種体系にしようと考えた。単に省力できるというだけではなく、作業の質、栽培の質が高まるものであるという前提においてだ。
買ったのは多木農工具のクリーンシーダだ。現在使っている2・4mのドライブハローにセッ卜することを前提に、麦の条間30cm・8条の形で使うべく8個の播種ユニッ卜と取り付けのためのツールバーのセッ卜である。
条間75cmの大豆は問題ないが、ニンジンの場合には2・4mのハローの幅に合わせる条数分の播種機を買うのももったいない。8条の播種ユニットを条開15cmにつめて、後は作業の仕方でつじつまを合わせることにした。
ロール式の播種機である多木のクリーンシーダは、繰り出しロールを交換することで種子の種類に対応する。ニンジンについては1粒播きにしようとすればコート種子を使わざるを得ない。種子はタキイの「陽明五寸」。しかし夏の播種では、潅漑設備がないと発芽率の低下が避けられないと聞いており、少しの不安はあった。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
女化通信
昭和5年生まれの高松求氏は、茨城県牛久市女化町という畑地帯に住む複合経営農家であるご自分ではすでに引退した“経営者”だという同氏だがその経営体験から生まれるさまざまなアイデアや経営への考え方は聞く者の規模や作目を問わず、示唆に富む「女化通信」のタイトルで同氏のその時々の仕事と本誌とも共同で進める経営実験の模様を紹介していきます。
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