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なぜ鎮圧が必要なのか
高松さんの住む土の軽い火山灰土壌などでは、過剰に砕土して膨軟な状態にしてしまえば、そもそも土壌の固相率が低いわけだから、雨の多少や濯漑の状態によって土壌中の有効水の量は大きな影響を受けることになる。乾けばカラカラ、降ればドブドブといった状態になりやすいわけだ。また、日照りが続けば毛管現象による土層表層への水分移動のために表層の肥料濃度が異常に高いものになってしまうこともあるだろう。
今回の苗立ちの揃いと発芽率の良さは、鎮圧をすることで日照りが続いても圃場内の土壌水分が保持されるとともに、水分が均一に保たれたためだろう。そのことが、水分だけでなく発芽の障害となるようなpHの異常などを起こさせなかった。高松氏の圃場は鎮圧以前に、プラウによる大きな土壊のままでの反転が行なわれており、さらに日頃から有機物が十分に還元されていることなど、種子が発芽するための良い環境条件がもとからできていたのだろう。
今回紹介するスペースはないが、大豆の場合も発芽が早く揃いも良かった。
高松さんのニンジンと大豆の播種作業は千葉、茨城の農業経営者をはじめ様々な企業の人に見にきていただいたが、慣行作業の中で「足で踏む」という作業動作が皆の話題となった。播種前であれ後であれ、それが播種位置の水分状態を安定化させ発芽率を上げる基本動作だったのだと。
考えてみれば、仮に体重60kgの人でも小さな足の裏にその体重がかかるのだから、その踏圧は決して小さくはないはずだ。それに比べれば、ロータリで土をフカフカにした上、播種機に付いている程度の鎮圧ローラではとても「足で踏む」ような鎮圧は不可能だろう。その踏圧の大きさを考えるなら、現在よりはるかに強力な鎮圧が必要なはずだ。よく播種前の「砕土整地」作業というが、作物の都合からすれば、それは「砕土鎮圧」作業であるべきなのではないか。
しかし不安もある、ニンジンは発芽さえすれば後はそれほど難しい問題は無いと聞いているが、土壌が堅いと変形根になるともいわれるからだ。この後のニンジンの成長の状態がどうであるかも合わせて見ながら、今後も報告を続けていく。
スガノーパワーハローに注目する
鎮圧ローラ付き縦軸ハロー
今回、高松さんの畑で砕土・鎮圧に使った縦軸ハロー(バーチカルハロー)について紹介しておく。これはスガノ農機が輸入しているイタリア・アルペゴ社製の機械であり、スガノの商品名では「パワーハロー」という。縦軸のナイフブレードが地面に対して垂直方向に付いており、それが回転しながら砕土していく。2本の爪(ナイフブレード)が1ユニッ卜になって独立しており、隣り合った各ユ二ットはギアの山が噛み合うように重なり合って回転する。作業幅はこのユニットの数で決まる。現在スガノが標準品として販売しているのは、8ユニット(ブレード16枚)の作業幅200回から12ユニット(24枚)の290cmまでの4タイプ。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
女化通信
昭和5年生まれの高松求氏は、茨城県牛久市女化町という畑地帯に住む複合経営農家であるご自分ではすでに引退した“経営者”だという同氏だがその経営体験から生まれるさまざまなアイデアや経営への考え方は聞く者の規模や作目を問わず、示唆に富む「女化通信」のタイトルで同氏のその時々の仕事と本誌とも共同で進める経営実験の模様を紹介していきます。
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