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Opinion

農業従事者の目的意識を問う

  • 片岡仁彦
  • 2005年11月01日
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「経営」という言葉は、農業の分野でもこの頃よく耳にしますが、農業従事者自身、それは何なのかよくわかってないような気がします。行政は法人化、家族経営協定、認定農業者などと言いますが、そうしたからといって「経営」ではないのです。これらの制度は、補助金の受け皿など彼らの仕事の場でしかありません。
 「経営」という言葉は、農業の分野でもこの頃よく耳にしますが、農業従事者自身、それは何なのかよくわかってないような気がします。行政は法人化、家族経営協定、認定農業者などと言いますが、そうしたからといって「経営」ではないのです。これらの制度は、補助金の受け皿など彼らの仕事の場でしかありません。

 農業従事者が彼らを利用し、有用な補助金や制度を利用するのなら良いのですが、問題は「もらうのがあたりまえ」「やってあげている」といった気持ちです。

 私が思うに「農業従事者は誰かに頼まれて農業をやっているのか」ということです。例えば、近所のご主人が亡くなって、奥さんではできないからといって頼まれることがあります。この時の気持ちの持ち方、考え方です。農地を「貸していただく」「借りていただく」というお互い様ならよいのですが、「貸してやってる」「借りてやってる」というのは問題外です。

 言葉は悪いかもしれませんが、私を含め、農業従事者たちは「勝手にやっている」のです。今までは「やってあげている」でもよかったのかもしれませんが、すでに競争相手が他産業から参入してきて「農業経営」をやり始めています。そもそも勝手(自由)にやっている人に対し、国は農業を保護しなければならないと、補助金をばらまいたのです。その結果、内容は悪くなるばかりで、それを"もらう"だけに意識を集中し、肝心な生産をおろそかにしている"たかり"にも思えるようなことが見受けられます。

 生産組合や個人事業主など、補助金を貰うためだけに法人化をしたような例は、周りを見渡せばたくさんあるのではないですか?どこの世界に、生活保護を貰っている産業に発展や後継ぎが存在するなどと考えるというのでしょうか?何のために農業をやっているのか、目的を今一度考えてみる必要があると思います。目的が金儲けの人は辞めてください。それは結果です。

 話は変わりますが、よく生産者はコメの値段が安くてどうしようもないと言います。でもコメの購入者はJAではなく、それを食べている消費者であり、販売価格も消費者が決めているのです。

 たしかに日本人の食生活が変化したのは事実です。しかし、どれほどの生産者が食べる人のことを思い、生産を行ってきたというのでしょうか。食べる人を思い、生産に力を注ぐというエネルギーを、補助金をもらうことばかりに向けている間に、消費者にそっぽを向かれてしまったのです。

 「売れるコメ作り」などと地域間同質競争している間に、一方で490%もの関税が段階的に引き下げられ、1kg100円以下で外国産の高品質なコメが入ってくる時代も、もうすぐ目の前に迫っています。その責任までも、また国に押し付けてしまっているようでは、これまでと同じです。日本のコメが減反しても余っているのに、なぜ輸入するのかと疑問を持つかもしれませんが、それは生産者の発想でしかありません。購入する側の気持ちを考えれば、当然のことなのです。

 今、日本には物が溢れかえっています。しかしバブルの時のように無駄な買い物をしなくなっています。そのなかで選ばれるためには、何をしなければいけないのかを真剣に考える時代になっています。高度充足度社会である所以です。

 色々な農業に関する補助金は、日本国民の汗水流した税金で賄われています。繰り返しになりますが、目先の金しか追わない、自分だけよければいい、農薬の登録外使用をする……自分の都合でしか考えない人は、誰がその生産物を食べているのか今一度考えてほしいものである。

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