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【津軽・黄金崎農業通信】
前期売上4億5000万円にとどまるも、今期は5億円を目指して農場職員の意気さかん
- (有)サンアップル醸造ジャパン 社長 木村慎一
- 第3回 1996年08月01日
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天候回復し農作物に勢い
前号で今年の天候が極めて不順であることを紹介しましたが、その不順天候もようやく7月24日あたりから回復してきました。これに伴って、作物の生育遅れが回復しつつあり、加えて夜に雨が降って、日中晴れるという目も続き、ここ(8月上旬)にきて生育に勢いがでてきています。
バレイショは開花時期が例年より10日以上も遅れ7月中・下旬になりましたが、その後の肥大期は天候に恵まれて、いけそうな感じがしています。
ダイコンも、大豆、ニンジンも、ナガイモも天候回復を待っていたかのように、茎葉が生き生きとしてきています。こうした作物が、白神山地や岩木山の麓で健やかに伸び始めているのを見るのは、農業人でなければ味わえない喜びです。
100haを超え最も面積の多い小麦の収穫は、7月20日から始まり、30日に終わりました。小麦の収穫では、商品価値のなくなる穂発芽をもたらす降雨が強敵です。しかし、おおむね天候に恵まれ、汎用型コンバイン5台を投入して、適期に収穫できました。刈り終えた麦は、農場本場から約 70km離れた農協のライスセンターヘダンプトラックでただちに運び込み、乾燥仕上げしています。
適期刈りできたとはいえ、収量、品質は昨年よりいまひとつ見劣りしました。播種時の降雨、種子の発芽不良、登熟期の日照不足などが要因です。初めて作付けした岩木山麓では、皆無作となったところもでました。残念なことです。
この小麦収穫の最盛期に、農場は悲しみに覆われました。小麦担当の竹内雅孝の長男智則(20)が26日、八戸市の海岸で高波にのまれて、帰らぬ人となったのです。一緒に農場を築き上げた佐々木君夫、竹内雅孝、それに私は競争するように、それぞれ3人の子供を育て上げたのですが、その中で智則がいちばん、この農場を気に入っていたようなのです。小さい頃から農場にきて遊び、手伝い、高校、大学に入ってからも夏休みには農場へやってきて、農作業をしていたのです。性格もハキハキし、社交的で誰からも愛されていました。今年も間もなく、農場へ顔を出すだろと思っていた矢先の事故でした。農業系か工業系か迷った末に、とりあえず工業大学には入っていましたが、私などは密かに、農場のよき後継者になるのではないかと思っていました。竹内の無念さを思いやると、言葉もありません。
しかし、生き物である作物は、こんな悲しみを待ってくれません。いまは小麦だけでなく、1.5haのキャベツの収穫期にもなっているのです。
キャベツは、昨年、JTとの契約でしたが、今年はそれがないため思い切って市場出荷することにしました。収穫したものは、コンテナに入れ、バレイショの冷蔵庫を活用し、差圧予冷のようなやり方をして貯蔵性を高めました。
ものは堅く仕上がり、よかったのですが、市況は大暴落でまるっきりの赤字になりそうです。大腸菌0157騒動でキュウリ、レタスなどのサラダとして生で食べられる野菜は、消費が減退して、値崩れを起こしているのです。キャベツもその影響で荷動きが極めて鈍くなり、暴落したのです。何としても恨めしい0157です。それでも、8月上旬まで収穫できるものは最後まで出荷することにしています。作り育てたものは、いたずらに廃棄すべきではないと、私は考えています。
小麦の後作となるダイコンの植え付け作業の準備もしなければなりません。岩木山麓の畑はまだまだ石が多く、深耕の際、石に強いプラウが必要です。スウェーデン製のプラウにがんばってもらっていますが、それを見たスガノ農機では技術陣が総力を挙げて改良したボトムプラウを当農場に持ち込んでくれました。その能力は、「さすがスガノ」と私も思わずうなるほどです。スウェーデン製に負けず劣らずの能力なのです。実は、外国に負けないものを作れ、とスガノ農機にハッパをかけたのですが、そのとおり実現してくれたのです。わが国の農機メーカーの底力を見たような気がします。こうした関連産業がバックにいるということは、農業者としては心強い限りです。ただし、価格がもっと下がればなおうれしいのですが。
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木村慎一 キムラシンイチ
(有)サンアップル醸造ジャパン
社長
1950年、青森県生まれ。4Hクラブの仲間とともに76年、農事組合法人黄金崎農場(現・⑭黄金崎農場)を設立。88年、青森県青年農業士会会長に就任。2001年、青森県農業経営士会会長に就任。05年、黄金崎農場を退社し、⑰サンアップル醸造ジャパンを設立。07年、ウクライナで大豆栽培に携わるも、11年に撤退。12年、ミャンマーとロシア(ウラジオストク)で農業指導に当たる。
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