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田牧一郎のカリフォルニア稲作便り

農業自由化時代に、私のカリフォルニア農業体験が日本のコメ作り、コメ産業に活かせないか。

●生産者のコメ販売


 カリフォルニアのコメ生産農家は玄米ではなく乾籾のままで販売するのが普通です。

 籾の品質と精米歩留まり、そして一番大きな要因が品種ですが、それらによって生産者販売単価が決まります。生産者は、より有利に売れるコメをたくさん収獲する努力をするのはもちろんですが、販売面つまり誰がどのような条件でどのようなコメを買うのか、常に関心を持っています。通常、生産者の作った籾は精米会社が買い取ります。農協も精米工場を持っており精米会社と同じ位置づけになります。

 カリフォルニアには現在二つの農協も含め合計15の精米会社があります。そこがカリフォルニアで生産される8割程度の籾を生産者と作付け前後の時期に買い取りの契約をします。残りの2割はコメの売買のみをしている会社やコメの卸業者、あるいは生産者のグループで販売をする所などが、買い取りの契約を結びます。そしてごくわずかどことも契約を持たずに作付けし、時期を見ながら販売する生産者がいます。

 毎年2月頃にカリフォルニア・コメ業界で一番取扱量の大きい農協組織がその年の生産・販売の計画を発表し、組合員である生産者に価格の動向などを説明します。これに対し精米業各社が独白の価格を生産農家に示し売買契約の締結を促します。

 コメはいままでもそして新しい法律の中でもCCC(政府の穀物金融機関)のローンが適用されることになっています。これはその年に収獲された籾を担保に融資を受けれる制度です。コメの種別精米歩留まり・品質で融資額が異なりますが、大多数のカリフォルニア産中粒種は45kgの籾で約6ドル借りることができます。この融資は生産者本人あるいは本人が認めた第三者が金利をつけて返済しなければそのコメを動かすことができません。通常生産された翌年の8月いっぱいで返済しないと、いわゆる質流れのような状況になり政府の持ち物になってしまいます。

 ただしこの返済金は国際相場に連動しており、相場が低くなると返済金は借入額を下回っても、相場で返済すればよく金利も支払う必要がなくなってしまいます。これはアメリカ産のコメが国際市場で価格競争をしやすいように作られた制度で、一般には見えにくい補助金と言えるでしょう。

 CCCローンの話が長くなってしまいましたが、通常、生産者と買い手である精米業者・農協などの価格交渉は、このローンからどれだけ高く買うかという話になります。一般の申粒種(M-201、M-202などカルローズと呼ばれるコメ)は2~3ドル、良質米申粒種のM-401などは3~4ドル、短粒種の良質米などは8~10ドルと価格帯ができます。これはそれぞれの業者が原料価格は低く押え、販売時に有利にしようと試みるわけですが、生産者の方も各買い手の言い値を検討して契約しますので、相場から大きくはずれることはありません。

 しかし、一方ではプール計算という手法も多く用いられており、コメが生産された翌年にほとんどのコメが売れてからの単価の最終決定となります。日本のかつての自主流通米の清算払いとほとんど同じ方法だと思います。このように生産農家は栽培計画と同時進行で販売を行ない、稲作経営をしております。

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