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【エクセレント農協探訪記】
北海道・摩周農協
- 土門剛
- 第10回 1996年08月01日
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「開拓農民は大自然との勝負です」こんな言葉を聞いたのは、同じ開拓農民の子で、今は岩手県江刺市で大規模稲作を展開する家子憲昭さんからだ。
職業柄、全国各地の農業地帯を回るが、あれっと思うことがよくある。ものすごく条件の不利な山間地などで、とても立派な農業を営んでいる生産者がいることだ。そのルーツを聞けば、だいたい1、2代前に開拓農民として入植してきたという言葉が返ってくる。いつか訪れたことがある大分県玖珠郡九重町の江藤一美さんも、その一人だった。
たしか、その江藤さんにも
「開拓農民はなぜそれだけたくましいのですか」
と聞いたことがある。その時の答えはさだかには覚えていないが、恐らく最初に入植した時には、山間地なら、まず死ぬ思いがする抜根作業が待ちかまえていたのだろう。今のような作業機械は何もない。すべてが人力に頼っていた。その苦労は筆舌に尽くしがたいものがあった。それが何事にも負けない開拓農民魂に昇華していったのだろうか。
農業者にも開拓魂があるように、農協にも開拓魂を誇るスーパー農協がいくつかある。北海道川上郡弟子屈町の摩周農協(徳永哲雄組合長)はその一つだ。この農協は、今から10数年前に今の名称に変更する。その前には「弟子屈町開拓農協」を名乗っていた。名称変更を契機に総合農協に移行した。今も開拓農協は全国に41農協ほどあって、「全国開拓農協連」という全国組織もある。
今回、この農協を取り上げたのは、ひとつわけがある。同じ町に開拓農協と、そうでない総合農協の弟子屈町農協があって、開拓農民魂で農協経営も大きな格差がつくことを証明したいためだった。その経営格差がどこでつくか、徳永組合長に聞いてもハッキリと答えてくれなかつた。そこで隣りの標茶町に住む友人の酪農家に説明を求めたら。
「農家の気構えが違うんだよ。何ごとにつけとてもシビアなんだね。それに比べ弟子屈町農協の組合員は甘えがあるね。それはね、開拓農民は僻地に住むので集落を形成せず散在して住むからではないかな。山奥にポツンと暮らすということは、誰も頼る者がおらず、万事、自分で片付けなければならないということを意味するのだ」という返事が戻ってきた。
職業柄、全国各地の農業地帯を回るが、あれっと思うことがよくある。ものすごく条件の不利な山間地などで、とても立派な農業を営んでいる生産者がいることだ。そのルーツを聞けば、だいたい1、2代前に開拓農民として入植してきたという言葉が返ってくる。いつか訪れたことがある大分県玖珠郡九重町の江藤一美さんも、その一人だった。
たしか、その江藤さんにも
「開拓農民はなぜそれだけたくましいのですか」
と聞いたことがある。その時の答えはさだかには覚えていないが、恐らく最初に入植した時には、山間地なら、まず死ぬ思いがする抜根作業が待ちかまえていたのだろう。今のような作業機械は何もない。すべてが人力に頼っていた。その苦労は筆舌に尽くしがたいものがあった。それが何事にも負けない開拓農民魂に昇華していったのだろうか。
1戸平均10町からスタート
農業者にも開拓魂があるように、農協にも開拓魂を誇るスーパー農協がいくつかある。北海道川上郡弟子屈町の摩周農協(徳永哲雄組合長)はその一つだ。この農協は、今から10数年前に今の名称に変更する。その前には「弟子屈町開拓農協」を名乗っていた。名称変更を契機に総合農協に移行した。今も開拓農協は全国に41農協ほどあって、「全国開拓農協連」という全国組織もある。
今回、この農協を取り上げたのは、ひとつわけがある。同じ町に開拓農協と、そうでない総合農協の弟子屈町農協があって、開拓農民魂で農協経営も大きな格差がつくことを証明したいためだった。その経営格差がどこでつくか、徳永組合長に聞いてもハッキリと答えてくれなかつた。そこで隣りの標茶町に住む友人の酪農家に説明を求めたら。
「農家の気構えが違うんだよ。何ごとにつけとてもシビアなんだね。それに比べ弟子屈町農協の組合員は甘えがあるね。それはね、開拓農民は僻地に住むので集落を形成せず散在して住むからではないかな。山奥にポツンと暮らすということは、誰も頼る者がおらず、万事、自分で片付けなければならないということを意味するのだ」という返事が戻ってきた。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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