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このマニフェストを「バラマキの発想でしかない」とかみついたメディアがあった。2004年3月30日付け週刊エコノミスト誌だ。1兆円の直接支払いに対し、「こんな政策を本気で実現したら都市有権者にソッポを向かれてしまう。せっかく築いた党の支持基盤である都市有権者に逃げられかねない」とコメントした。
それに対し前出の代議士は、「侮辱的名誉き損的記載をしている。…政策的批判の域を外れた人格などに対する誹謗中傷である」(ホームページから)とクレームを付けていた。
口を開けて待つ雛鳥
私は先日、北海道北見市へと、ある会の講演に出かけた。この講演会は、農水官僚出身で民主党代議士の知人S氏(前出の悪名高いS氏とは当然別人)も一緒のはずだったが、突然の衆議院解散でドタキャンに。講演会の目玉は、そのS氏の話らしく、筆者はお添えものという役回りのようだった。S氏は、前々回の総選挙で当選、新人議員ながらマニフェスト作りにも大活躍した人物だ。
私はドタキャンしたS氏の分までしゃべらされた。これに反してギャラは薄謝1人分!。お礼代わりに本当のことを話したら、“興行主”のT氏から大目玉を喰らってしまった。それは、農業法人代表の方からの直接支払いに関する問いへの答えだった。
「政府が考えている直接支払いは、今の補助金を整理統合する形ですから、一定規模以上の農家に渡すといっても、他の納税者との兼ね合いがあり、一部の新聞が取りざたした1戸500万円とかいう額がもらえるということではありません。今の補助金の2割増程度ではないでしょうか。ここに集まる生産者なら、そんな補助金はいらないというぐらいの気迫で経営に当たっていただきたい」
質問の主は納得しなかったのか、次いで融資の質問を出してきた。主旨は、「もっと銀行が農業にカネを貸すようにして欲しい」だった。
これに対しては、「あなたが立派な経営をすれば、畑作や酪農であっても銀行はカネを貸してくれるもんだよ」と突き放すような口調で言っておいた。として最後っ屁を一発。
「農業も含め北海道がダメなのは、何でも国に頼りすぎることだ。口を開ければ、補助金や融資のことばかり。安易に国に頼るような姿勢を改めなければ北海道は絶対によくならない。農業も同じことだ!」
それでもT氏。不満なのか2次会、3次会に移ってもブツブツ文句を言っていた。そういえば、その会に呼ばれたのは2回目。前回は7、8年前のことだった。同会はサロン風の組織で、T氏のキャラクターで農家を集めていたが、会員数も当時と比較して減っているようだった。北海道農業の厳しさをあらためて実感させられた。
2007年度から導入予定の直接支払いは、北海道が主な舞台となる。農家が過度な期待を持つ気持ちはわからぬでもないが、これで農業経営がすべて解決するような農家の感覚はどうしても理解ができない。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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