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【農業経営者ルポ】
父が先生、畑が学校だった我々三兄弟
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第19回 1996年10月01日
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寺島農場のことを知ったのは、インターネットである。索引で農業の項目を眺めていたら、元気の良い農家のホームページに出くわした。寺島農場のホームページだった。3人の兄弟が山形県南陽市と千葉県旭市の2ヵ所の農場で経営をしているとあり、生産物の販売案内とともに、家族全員のいかにも楽しそうな暮らしぶりが紹介されていた。
寺島英治さん33歳。寺島家の長男であり、兄弟3人とその妻たちで作る有限会社寺島農場の代表者である。
父、隆治氏の経営から独立した息子たちの法人経営の農場は千葉県旭市にある。そこでは、オカヒジキ(同社の商品名では「若芽ひじき」)という野菜の生産と販売をしており、農場の実務は次男の敏・恭子さん夫婦と三男の正雄・百合さん夫妻が千葉に常駐して担当している。三男の正雄さんは、奥さんの実家に婿入りして大河原姓を名のっているが寺島農場で仕事をしている。社長の英治さんは、農場の立ち上げをした後、夫婦で山形の実家仁戻り、父隆治氏(59歳)とともに野菜作とオカヒジキの種苗生産をしている。
山形の個人農園は、隆治氏が翌成の時に開墾して作った標高700mの山の上にある15haの畑での野菜作りが経営の中心。また、千葉の法人農場に販売するオカヒジキの種苗生産も行っている。
案内された畑は文字通りの山の中だった。南陽市の市内から離れて細い一般道を走り、さらに四輪駆動の車でもひっくり返りそうな林道を8kmも山に分け入った、峠のような場所に畑は拓かれていた。
千葉でオカヒジキを始める前には、そこで20人以上のパート主婦を集めて、1日に4tトラックで4台分もダイコンやハクサイを収穫したこともあったという。現在では両親と英治さん夫婦の家族労力でこなせる面積にしている。なにしろ山の中なので、人を頼むとなれば朝夕のパートの送迎時間だけでも一仕事で、中途半端な面積ならむしろ家族でやれる範囲にした方が経営の効率は良いからだ。
今年の栽培面積は、ハクサイを3ha、オカヒジキの種子採取畑が2ha程度。全部で15haある山の畑はほとんど遊ばせている。
ところで、寺島さんの畑を見尨時、その草の多さに驚いた。しかし、それには理由があった。
以前、放棄していた雑草だらけになった畑に改めて作付けをしてみると素晴らしい出来だった。手が回らなく草を生やした結果、雑草が土壌を蘇らせていたのだ。しかも、取り切れない草の間に育つ野菜は健康で農薬を使わなくても病気や虫が減るのだった。その体験を通して英治さんはマルチも止めてしまった。草を生やすためだ。草はプラウをかければなんとかなる。まったく農薬を使用していないというハクサイ畑を見たが、草の中でハクサイは立派に育っているし、確かに虫や病気の障害が少ない。
英治さんの野菜は、堆肥を使い、一部の畑では農薬もまったく使わない無農薬有機栽培であり、それを契約先に出荷しているのだ。
一方、千葉の法人農場では1.5haのビニールハウスに通年でオカヒジキを栽培している。これも完全無農薬で化学肥料も使わない。こちらでは収穫調製の手間がかかるため常時パートを雇っている。
寺島英治さん33歳。寺島家の長男であり、兄弟3人とその妻たちで作る有限会社寺島農場の代表者である。
父、隆治氏の経営から独立した息子たちの法人経営の農場は千葉県旭市にある。そこでは、オカヒジキ(同社の商品名では「若芽ひじき」)という野菜の生産と販売をしており、農場の実務は次男の敏・恭子さん夫婦と三男の正雄・百合さん夫妻が千葉に常駐して担当している。三男の正雄さんは、奥さんの実家に婿入りして大河原姓を名のっているが寺島農場で仕事をしている。社長の英治さんは、農場の立ち上げをした後、夫婦で山形の実家仁戻り、父隆治氏(59歳)とともに野菜作とオカヒジキの種苗生産をしている。
山形の個人農園は、隆治氏が翌成の時に開墾して作った標高700mの山の上にある15haの畑での野菜作りが経営の中心。また、千葉の法人農場に販売するオカヒジキの種苗生産も行っている。
案内された畑は文字通りの山の中だった。南陽市の市内から離れて細い一般道を走り、さらに四輪駆動の車でもひっくり返りそうな林道を8kmも山に分け入った、峠のような場所に畑は拓かれていた。
千葉でオカヒジキを始める前には、そこで20人以上のパート主婦を集めて、1日に4tトラックで4台分もダイコンやハクサイを収穫したこともあったという。現在では両親と英治さん夫婦の家族労力でこなせる面積にしている。なにしろ山の中なので、人を頼むとなれば朝夕のパートの送迎時間だけでも一仕事で、中途半端な面積ならむしろ家族でやれる範囲にした方が経営の効率は良いからだ。
今年の栽培面積は、ハクサイを3ha、オカヒジキの種子採取畑が2ha程度。全部で15haある山の畑はほとんど遊ばせている。
ところで、寺島さんの畑を見尨時、その草の多さに驚いた。しかし、それには理由があった。
以前、放棄していた雑草だらけになった畑に改めて作付けをしてみると素晴らしい出来だった。手が回らなく草を生やした結果、雑草が土壌を蘇らせていたのだ。しかも、取り切れない草の間に育つ野菜は健康で農薬を使わなくても病気や虫が減るのだった。その体験を通して英治さんはマルチも止めてしまった。草を生やすためだ。草はプラウをかければなんとかなる。まったく農薬を使用していないというハクサイ畑を見たが、草の中でハクサイは立派に育っているし、確かに虫や病気の障害が少ない。
英治さんの野菜は、堆肥を使い、一部の畑では農薬もまったく使わない無農薬有機栽培であり、それを契約先に出荷しているのだ。
一方、千葉の法人農場では1.5haのビニールハウスに通年でオカヒジキを栽培している。これも完全無農薬で化学肥料も使わない。こちらでは収穫調製の手間がかかるため常時パートを雇っている。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
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