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新潟コシヒカリ最大のセールスポイントは、粘りである。本来なら、炊飯しての粘りと固さについて検査しておくべきなのに、それらも抜け落ちていた。その理由を渡辺課長に質すと「県食品研究センターで検査可能と思っていたのですが」との答えが戻ってきた。それにはこう論評しておいた。
「収穫後に試験を委託されるということであれば、結果が出るのは年末近くでしょうね。そのときにはすでに市場の評価の方が先に出てしまっているのではないでしょうか。県は、あらゆる手だてを講じられて一斉更新に踏み切りました。新潟コシにとって最大のウリである粘りや固さを検査しないで一斉更新に生産者を駆り立てたのはかなり無責任な話ではありませんか。一斉更新は無謀な試みであったことを自ら認めたのと同じことではありませんか」
受話器の向こうの渡辺課長は困惑の体を隠さなかった。
新潟県が物理的特性についての試験を依頼する先は、独立行政法人食品総合研究所(茨城県つくば市)が有力である。
米の食味検査は通常、(財)日本穀物検定協会(略称・穀検)に依頼することが多い。それが穀検には依頼がないし、渡辺課長の話を聞く限り依頼してくるような雰囲気もない。これについて協会幹部は、「新しい品種が出ますと、内々で検査を依頼されることがよくあります。市場に出す前に新品種の実力度合いを小手調べするためです。ナンバー・ワン産地の新潟県が、県の命運をかけて取り組むコシBLで穀検に検査を依頼してこられないのは、ちょっと解せません」と首を傾げる。
その前に新潟県と穀検のややホットな関係について説明をしておこう。実は、新潟県はBLコシについての試験を依頼したことがあった。そのとき、穀検はBLコシの原種(6種類)を提供しするよう要請したところ、新潟県は「出せない」と返答してきたというのである。穀検が原種提供を求めたのは、DNA鑑定のため原種が必要となったため。だが、DNA鑑定にまつわるもので特許を申請しているので出せない、というのが新潟県側の理由であったようだ。ちなみに新潟県が食総研にテストを依頼するのは、DNA鑑定キットやらを共同開発したという事情があってのことらしいが、新潟県はなんとしても穀検の検査だけは受けたくないようだ。
同じような話を農水省総合食品局消費流通課の島田純課長も県東京事務所の担当者から聞かされていて、筆者の質問に「新潟県は特許問題があるから出せないと言っている」と説明しておられた。しかし、この説明は解せない。島田課長にはこう話しておいた。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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