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江刺の稲

地域を越えた機械利用ネットワーク

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第114回 2005年08月01日

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今月号で紹介した移動式の真空予冷装置や4条1畦全面掘りのニンジンハーベスタは、地域を越えた新しい農業のビジネスモデルの展開を予感させる。高性能で高い耐久性を備えた機械・施設を、季節の異なる地域で使いまわすのである。他の先進国ではあたりまえな機械の利用体系である。
 今月号で紹介した移動式の真空予冷装置や4条1畦全面掘りのニンジンハーベスタは、地域を越えた新しい農業のビジネスモデルの展開を予感させる。高性能で高い耐久性を備えた機械・施設を、季節の異なる地域で使いまわすのである。他の先進国ではあたりまえな機械の利用体系である。

 農業は風土の制約を受けると言われてきた。しかし、風土の制約を受けているのは作物で、経営ではない。経営者の想像力と行動力があれば、農業経営は地域を越えて発展が可能であり、地域の風土を越えることで農業経営には大きな可能性が与えられるのだ。

 農業で機械施設の投資負担を大きくさせる最大の理由は季節性である。仮に、作期が同じ地域内で機械を共同利用したとしてもその償却コスト低減には限界がある。圧倒的な生産コストダウンを目指すのなら、作期の異なる産地を連携させ、季節を越える経営を目指す必要がある。

 本誌読者にも本拠地の農場に加えて、季節その他の条件が異なる場所に第二農場やビジネスパートナーを持つ人々がいる。例えば、5月号で紹介した北海道南幌町の JOB(川平浩昭代表)は、鹿児島県内に農場を借りて事業展開している。川平氏は自らを“キャベツメーカー”と呼び、土地に縛られた農家・農業という存在を超えようとしている。他にも石川の人が三重に、群馬が青森に、さらには和歌山の経営者がインドネシアに第二農場を持って経営している。

 地域を越えた農業経営は、一つの経営で完結しなくてもできる。異なる産地の経営者や組織がネットワークを組んで機械を共同利用したり、季節リースにしたりすることも可能ではないか。本誌読者の間でも、福井、千葉、栃木、宮城、新潟、秋田の収穫時期が異なるジャガイモ生産がネットワークを組んでポテトハーベスタを共同利用していることは何度か紹介した。

 この例では、導入価格からハーベスタのha当り利用単価を定め、各自は使用面積に合せて利用料を払うという形にしている。年間にかかるメンテナンス、部品代などについては、総額を全員の総作業面積で割り、各自の使用面積分を負担する。ただし、明らかに個人の責に帰すべき破損については当人の負担とする。各産地を移動する運賃は合計金額を均等割りし全員が負担するようにしてきた。

 所有する機械の台数が限られるため参加者に迷惑を与えていることもある。つてを頼って機械を借りたりもする。解決すべき問題はたくさんある。それでもやってみれば間違いなく各経営者の経営コストダウンにつながるだけでなく、技術や経営理念を共有することでの事業者としての信頼性を高め、ビジネスチャンスを広げることにもつながっている。ただし、その機械利用ネットワークに参加する人々の目線が高いレベルで揃っていることが条件である。

 カルビーポテトなど、一部の食品メーカーや産地卸では、生産者支援のためにコントラクタを作ったり、機械をリースするようなことを行なっている。しかし、地域を越えてのケースはまだ少ない。

 もし、国が農業に国際競争力をつけると考えるのなら、地域や府県単位の農業支援策を考えるより、地域を越えた農業経営者や異業種のネットワークにこそ支援すべきなのである。日本の国土は南北3000kmである。そこにある多様な季節を活かさない手はない。

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