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第1回天敵利用研修会

食品の安全性が脚光を浴び、有機栽培や無農薬といった言葉が消費者の間でも話題になり、農業生産の現場でも環境保全の必要性や害虫の耐性の問題が浮上し、従来からの化学合成農薬の使用方法が見直されつつある。農薬の使用を減少させていくべきであるというのは、間違いなく大きな流れになってきている。その農薬に代わるものとして最近取り上げられているのが、天敵などを利用した生物防除法である。
 「第1回 天敵利用研修会」が10月26日~27日の2日間、熊本県で開催された。

 主催は、同時に発足し九日本バイオロジカルコントロール協議会。参加者は北海道から九州までの全国から100名以上にのぼり、初日は会場での講習会、2日目は現地実証圃場の視察がおこなわれた。

 初日の講演会の演題および講師は以下のとおり。

 「イチゴとメロンにおける天敵の上手な使い方」農林水産省野菜・茶業試験場久留米支場虫害研究室長柏尾具俊氏。「トマトにおける天敵の上手な使い方」熊本県農業研究センター農産園芸研究所病虫部技師古家忠氏。「天敵糸状菌の施設害虫への利用」宮崎県総合農業試験場害虫科技師黒木修一氏。「オランダにおける天敵利用について」九州病害虫防除推進協議会会長野中福次氏。

 講演の内容は、製品化された生物農薬を用いた使用の状況の紹介解説、研究中の天敵糸状菌の紹介解説、天敵利用の先進国オランダでの使用状況の紹介解説、また、その後に参加メーカーである株式会社トーメンと株式会社トモノアグリカより製品の紹介があった。

 2日目は、熊本県上益城郡清和村のトマト栽培農家2軒の実証圃場を視察した。

 生物を利用した防除方法がかなり以前から話題になっていたにもかかわらず、なかなか本格化しないのは技術的に難しい部分があるためだと筆者は考えていたのだが、この研修に参加をし、開発中の製品が数多くあって今まさに普及の段階に入っているのだということを知り、正直言って驚かされた。


生物利用の防除とは?


 まず生物利用の防除とはどのようなものなのか、そこから触れてみたいと思う。消費者の安全志向、自然環境への配慮などから農薬削減の動きが本格化していることに加え、害虫の薬剤抵抗性の発達、難防除害虫の発生などに対して、化学合成農薬に代わる生物的防除への期待が高まっているのは冒頭で述べたとおりである。

 生物を利用した防除方法は、寄生性昆虫、捕食性昆虫、病原微生物といった害虫の天敵を利用したものや、作物の耐虫性、不妊化した雄の放飼、フェロモンなどの生理活性物質の利用など、広範囲にわたる。今回の研修は天敵を利用したものに限っているので、ここでは前者の天敵を利用した防除方法を中心に述べてゆきたい。

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