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海外での利用状況は?
ここで天敵利用の進んでいる欧米での状況を、今回紹介のあったオランダを例にとって紹介してみよう。
オランダでは施設栽培での天敵の導入に成功しているが、なぜ成功したのか日本との違いを明確にしてみると、オランダは国土の4割が海面下にあり、いわゆる閉鎖水系になっており環境汚染の防止が国家的な課題で、減農薬の推進が国をあげて行なわれている。
また、北海道よりも北に位置する冷涼な気候で、単純害虫の種類が限られる生物相であるうえ、発生の密度も低い。さらに、国全体が平坦で気候の変化も少ない。こういった条件がさらに生物相の単純化に拍車をかけている。
以上のことから、防除技術や天敵の種類の統一も容易で、天敵を利用した防除が普及しやすい状況にあるといえる。
それに対して、欧米のメーカーの技術者が日本に来て驚くのは、害虫の種類の多さと、その発生の密度の高さであるという。
日本は国土が南北に長いために気候もさまざまで、また、同じ気候であっても作型や栽培方法、施設の条件も違い、施設栽培といっても多種多様である。
このように見てみると、日本で、天敵を利用した防除を一つに統一するのはかなりの困難がともなうことがわかる。それぞれの条件にあった天敵利用の防除を確立する必要がある。
天敵防除の目的は?
天敵を利用して防除を行なう目的は以下のとおりである。
(1)薬剤に対する害虫の抵抗性の回避。
(2)農薬減少による安全性、コスト低減。
(3)効果の持続性や農薬散布の困難な場所にたいする防除効果による省力性。
しかしながら現在の状況ではこれらを同時に満たすことは困難で、天敵を利用した防除をおこなう場合には、先にも述べたように、目的をはっきりしなければ期待はずれに終わる可能性が大きい。とくにコスト低減や省力性を求めたい場合には、防除プログラムをしっかり作成する必要があるだろう。
日本の生産現場で天敵を利用しているのは、筆者の知る範囲では、マルハナバチなどの昆虫を利用していることにより農薬の使用が限られているような場合が多い。コストが高い、効果がはっきりしない、効果が不安定である、というのが農家の代表的な意見であるが、これは、天敵を利用した防除の目的を従来からの農薬と同じようにとらえているためであろう。「天敵の利用と化学合成農薬の使用は効果も目的も違う」ということを理解する必要があり、そのように意識が変わらないかぎり急速な普及にはつながらないだろう。
今後、続々と天敵が開発され、対象となる害虫が増え、使用方法の研究が進めば十分に活用される可能性がある。障害になるとすればコストの面であろう。
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