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「課長さん、ひょっとしてそのアンケート協力した人にお礼をしているかもしれませんな。もしお礼をしているようであれば、公正かつ正確なアンケート結果とは言い難いのではないでしょうか。ところでどのような状況と方法でアンケートを実施したか新潟県に対しヒアリングしましたか?少なくとも農水省消費流通課はそのデータで『食味が同等』と判断したわけですから、当然、チェックするべき立場ですよね」
島田課長以下、一同うつむいたままで返答なしだった。
やはりお礼をしていたのである。
「新潟産の従来コシ、こしいぶき、コシBLの3品種を食味比較してもらいました。参加したお客さんにはお米を入れる手提げバックにお米をプレゼントしました」(新潟県関係者)
筆者の追求に分が悪くなった島田課長は、次に県総合食品研究所が実施した調査結果を書いた紙切れを持ち出してきた。新潟県は、コシBLの試作が軌道にのった03年度に同研究所でコシBLの試験研究を実施していたのである。3枚のペーパーには食味についてのデータが記載されてあった。食味評価は、整粒歩合、タンパク含有率、味度値。アミロース、食味総合評価、梅雨越しの食味の6項目が対象。ただ数字をズラッと並べているだけで、どのような方法で食味試験を実施したかについてはいっさい記載なしだ。そのデータを見た筆者の感想を島田課長にこう伝えておいた。
「新潟県は、県の命運をかけて品種の一斉更新をやっているんですよ。その県が、こんな手抜き、手前味噌なデータしか出せないというのは、消費者を愚弄した話はありませんか?プロの立場にある農水省消費流通課がそんなデータでもって『コシBLは従来コシと食味が同等』と新潟県の判断にお墨付きを与えるのはお粗末と言われても仕方はありませんね。あなたが責任ある立場におられるのなら、食味試験がどのような状況下で実施されたかの詳細な資料の提出を新潟県に求めなければなりません。少なくとも(財)日本穀物検定協会か(独)食品総合研究所のような第三者機関の試験機関での食味試験結果の提出を求めるべきではありませんか。この秋にコシBLが出回りマーケットで低い評価しか得られなかった場合は、農水省消費流通課としてどのような責任をとられるのでしょうか」
うんざり顔の島田課長は、やおらこんな反論をしてこられた。
「農産物検査法上、コシBLと従来コシを同じ括りにしたのは、このアンケート調査の結果だけではありません。新潟県では有識者の意見を十分に聞いて判断したと聞いております」とコメントしてきた。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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