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編集長インタビュー

マーケティングのない日本農業 植物工場ならではの付加価値を

本誌4月号の本欄では東京都心の「地下農園」を運営する(株)パソナ社長の南部靖之氏に話をうかがった。このプロジェクトの技術指導に当たったのが、東海大学の高辻正基教授である。高辻教授は、「植物工場」研究の第一人者であるとともに、文科系と理科系の垣根をなくした交流をめざす「文理シナジー学会」の創設者でもある。農学から文学評論まで多彩な活動を展開する高辻教授に、植物工場をカギとしたビジネスとしての農業の可能性について聞いた。

マーケティングのない日本農業 植物工場ならではの付加価値を

昆 30年ほど前、先生が日立製作所の研究所におられた頃に取材でお話をうかがったことがあります。その時「農業の人は経験主義だからね」と語られたのがとても印象的でした。経験主義に陥って堂々巡りしている感のある農業の世界ですが、先生が携わってこられた植物工場の技術は、既成の農業観にとらわれない新規ビジネスとしての農業の新しい可能性を開くものだと思います。まず最初に、この植物工場とはいかなる技術なのか、簡単にお話しいただけますか。

高辻 一言で言うなら、植物生育の環境である温度、光、二酸化炭素、肥料などをコンピューター制御することによって作物を周年生産する技術ということになります。

 光源には太陽光のほか蛍光灯やLEDなどの人工光を利用します。季節や天候に左右されずに野菜が作れるということに加え、パソナの「地下農園」のように都心やビルの中でも作れる点が特徴です。また、無農薬、新鮮、清潔、高栄養価などの付加価値を付けた作物を作ることができます。もっとも、なんでも作れるわけではなく、葉菜や苗が中心ですが。

昆 ビジネスとしての採算面から見ると、どうなのでょう。

高辻 そこが問題なんです。いま完全制御型の植物工場は全国で十数カ所あります。

 利益が出ているところもあるのですが、全体的にはギリギリのところにある。いちばん肝心なことはマーケティングではないかと思います。今、世間が何を求めているか。例えば安全を保障する方法で作ったことを証明するデータを付ける。そういったことが十分されていないんです。


昆 日本の農業には政治と技術がある。しかし経営がないと私は思います。農協や農林省という組織が非常に強いため、そうした土壌ができてしまった。

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