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【江刺の稲】
おかしくないか?農業新聞のカルビー報道
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第112回 2005年06月01日
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植物防疫法違反容疑で農水省の告発を受けていたカルビーポテト1は、5月13日に行なわれた道庁による聴聞会で異議申し立てをせず、同社は「北海道種馬鈴しょ集荷販売業者」の登録を取り消された。
行政処分の法的根拠は、植物防疫法の第13条第4項の違反。つまり、(1)種馬鈴しょ生産農家にその種いもとなる馬鈴しょを譲渡したこと(2)当該生産農家が生産し同社に譲渡した種馬鈴しょを加工用馬鈴しょ生産農家に譲渡したこと。
カルビーポテトに落ち度があるのは事実だが、生産者やジャガイモ関係者の中には同社に同情的な意見も少なくない。新品種開発と供給の遅さ、種イモ品質への不満がその背景にある。
この件に関してカルビーポテトは弁明をしていない。本誌としての見解は追って明らかにしたい。
ところで、日本農業新聞および北海道内メディアがこの事件と関連付けて繰り広げている加工用ジャガイモ輸入阻止キャンペーンには大いに問題を感じる。
この植物防疫法違反事件に発展するきっかけとなった事実は、04年11月26日、富良野農協管内の同社の委託種苗生産圃場でジャガイモシスト線虫が確認されたこと。それを同社が道庁に報告をしたことに始まる。そして、同社による種イモ生産委託とその譲渡が植物防疫法違反に当るのではとメディアが報じた。
同社の違法性は検査を受けない種イモ生産とその譲渡であり、ジャガイモシスト線虫の発生とは関係ない。また、同社が契約する生産者の圃場でジャガイモシスト線虫が出たことは事実だが、カルビーが提供したスノーデンの元種イモがその原因だという確認はされておらず、後の調査でも現段階ではその種イモでの栽培圃場からもジャガイモシスト線虫は発見されていない。
しかし、日本農業新聞などの“報道”では、同社の種イモ生産委託が今回の線虫発生に結びついたかのような印象を与える記事を繰り返し伝えた。その心証を読者に与えた上で、生イモ輸入と国内での病害拡大の不安を煽ってはいないか。
記事の意図を僕は以下のように勘ぐった。植物防疫上の理由ではもう輸入を差し止められない。だったらカルビーポテト種イモ問題を利用して輸入阻止させる世論を喚起しようとしたのではないか。
カルビー(株)は端境期のポテトチップ原料の供給不安を解消するために輸入の必要性を何年も前から表明していた。同時期のポテトチップの減産が市場を冷やし、ジャガイモ自体の需要低下の原因にもなりかねないからだ。同社では端境期に1万トン程度の輸入をする一方、生産改革と販売促進により国内生産を3万トン以上伸ばそうと呼びかけていた。産地卸であるカルビーポテトは国内での増産に備えるべく青果事業への展開や、共に農業改革を進める生産者パートナーを求めてきたことは本誌読者ならご理解の通りだ。にもかかわらず、今それが明らかになったごとく「生ジャガ輸入を画策」(日農・3月30日)などと報じる。
カルビーがポテトチップの市場を作ったからジャガイモは北海道で唯一の大型商品作物として成長した。カルビーは北海道農業にとって伴に未来を作る同伴者である。同社に問題はあり、批判もされるべきだ。でも、それをネタに輸入阻止を叫ぶのは誰のためか?道内メディアの役目は、今こそ北海道農業がその敗北主義を脱し海外との競争に立ち向かう勇気を鼓舞することではないのか。
行政処分の法的根拠は、植物防疫法の第13条第4項の違反。つまり、(1)種馬鈴しょ生産農家にその種いもとなる馬鈴しょを譲渡したこと(2)当該生産農家が生産し同社に譲渡した種馬鈴しょを加工用馬鈴しょ生産農家に譲渡したこと。
カルビーポテトに落ち度があるのは事実だが、生産者やジャガイモ関係者の中には同社に同情的な意見も少なくない。新品種開発と供給の遅さ、種イモ品質への不満がその背景にある。
この件に関してカルビーポテトは弁明をしていない。本誌としての見解は追って明らかにしたい。
ところで、日本農業新聞および北海道内メディアがこの事件と関連付けて繰り広げている加工用ジャガイモ輸入阻止キャンペーンには大いに問題を感じる。
この植物防疫法違反事件に発展するきっかけとなった事実は、04年11月26日、富良野農協管内の同社の委託種苗生産圃場でジャガイモシスト線虫が確認されたこと。それを同社が道庁に報告をしたことに始まる。そして、同社による種イモ生産委託とその譲渡が植物防疫法違反に当るのではとメディアが報じた。
同社の違法性は検査を受けない種イモ生産とその譲渡であり、ジャガイモシスト線虫の発生とは関係ない。また、同社が契約する生産者の圃場でジャガイモシスト線虫が出たことは事実だが、カルビーが提供したスノーデンの元種イモがその原因だという確認はされておらず、後の調査でも現段階ではその種イモでの栽培圃場からもジャガイモシスト線虫は発見されていない。
しかし、日本農業新聞などの“報道”では、同社の種イモ生産委託が今回の線虫発生に結びついたかのような印象を与える記事を繰り返し伝えた。その心証を読者に与えた上で、生イモ輸入と国内での病害拡大の不安を煽ってはいないか。
記事の意図を僕は以下のように勘ぐった。植物防疫上の理由ではもう輸入を差し止められない。だったらカルビーポテト種イモ問題を利用して輸入阻止させる世論を喚起しようとしたのではないか。
カルビー(株)は端境期のポテトチップ原料の供給不安を解消するために輸入の必要性を何年も前から表明していた。同時期のポテトチップの減産が市場を冷やし、ジャガイモ自体の需要低下の原因にもなりかねないからだ。同社では端境期に1万トン程度の輸入をする一方、生産改革と販売促進により国内生産を3万トン以上伸ばそうと呼びかけていた。産地卸であるカルビーポテトは国内での増産に備えるべく青果事業への展開や、共に農業改革を進める生産者パートナーを求めてきたことは本誌読者ならご理解の通りだ。にもかかわらず、今それが明らかになったごとく「生ジャガ輸入を画策」(日農・3月30日)などと報じる。
カルビーがポテトチップの市場を作ったからジャガイモは北海道で唯一の大型商品作物として成長した。カルビーは北海道農業にとって伴に未来を作る同伴者である。同社に問題はあり、批判もされるべきだ。でも、それをネタに輸入阻止を叫ぶのは誰のためか?道内メディアの役目は、今こそ北海道農業がその敗北主義を脱し海外との競争に立ち向かう勇気を鼓舞することではないのか。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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