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Opinion

白菜の氏・素性

  • 宇田川雄二
  • 2005年05月01日
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日韓交流が盛んになり、韓国を旅行したことのある方も多いだろう。旅行先では必ず美味しいキムチをごちそうになり、それが、お代わり自由でいくらでも食べて良いなんて、得した気分になったことだろう。韓国まで出掛けられなくても、日本国内には多くの韓国料理店があり、キムチが食べられる。さらに、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでも販売されるようになった。
 日韓交流が盛んになり、韓国を旅行したことのある方も多いだろう。旅行先では必ず美味しいキムチをごちそうになり、それが、お代わり自由でいくらでも食べて良いなんて、得した気分になったことだろう。韓国まで出掛けられなくても、日本国内には多くの韓国料理店があり、キムチが食べられる。さらに、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでも販売されるようになった。

 韓国料理の代表格であるキムチは白菜、ダイコン、キュウリなど野菜をベースにして、それに唐辛子やアミ(小型のエビ)などの海産物で味付けた漬け物料理である。作った直後は、辛さや酸味はほとんど無く、きわめて爽やかな味であるが、その後日数と共に酸味が強くなり、辛くもなる。酸味が強くなったキムチは直接食べずに、キムチ鍋やキムチ餃子にして食べると格別である。キムチの貯蔵は通常の冷蔵庫では無理で、韓国の家庭には専用のキムチ冷蔵庫が必ずと言って良いほど普及している。キムチは食材や作り方で200種類以上あると言われている。

 かつて、私は韓国視察旅行の余興に慶州市郊外山岱里の農村体験施設(グリーンツーリズム)で慶州市農業技術センター生活改善係長の崔丁化さんからキムチ作りを教わった。彼女は横浜市の婦人組織から招待され、日本国内でキムチ作りの講習を行ったこともある。自他共に認めるキムチ料理の先生である。

 横浜市での体験から「日本産の白菜はみずっぽくてキムチには向いていない」と言う。その後、千葉市内で韓国料理店やっている鄭順玉さんらから同様のことを言われた。

 本当に日本産の白菜では美味しいキムチが作れないのだろうか?もしそうならばフランス料理にはフランス産の、イタリア料理にはイタリア産の、中国料理には中国産の野菜がそれぞれ必要になるではないか。

 そんなことはないだろう。柏市の西川さんは中国野菜を栽培し、横浜中華街の中国料理店を始め、中国料理専門店に供給している。

 韓国と日本の白菜では、遺伝的な差(氏)があるのだろうか?

 白菜は、明治新政府の勧業府によって行われた世界の野菜を我が国へ導入しようとした事業のうち、当時例外的に定着した唯一の野菜と言える。日本の白菜も韓国の白菜も基を辿れば中国の白菜になる。

 1910年から35年間の不幸な時代や現在の交流の時代を通して白菜の遺伝資源が相互に行き来しなかったとはとても考えられない。それならば、土壌や気象などの栽培環境すなわち、育ち(素性)の違いがあるのだろうか。

 韓国南部の白菜栽培は、水稲の後作か輪換畑で行われている。いずれも水田を利用しているのであり、排水が良いとは言え、関東地方の黒ボク土より乾燥しやすいとは考えられない。また、降水量も年間1400mm程度であり、関東地方のそれと大きく違わない。

 どうして日本の白菜がみずっぽいと言われるのだろうか?

 確かに日本で白菜を漬け物にする際、尻の部分から四等分して天日干しする。これによって余計な水分を除去しているのだろう。漬け物に利用するには水分が多すぎるのかな?

 いくら考えても結論が出ない。こんな時は実際に作ってみるに限る。

 韓国で採種された韓国の品種を頂き、千葉農総研で栽培して、千葉市内の韓国料理店に持ち込み、厨房長を務める洪名基さんにキムチを作ってもらった。おいしく作れたし、私が食べた限りでは韓国産のキムチと差を感じなかった。味音痴かなと不安にもなったが。

 来年は日本で採種された日本の品種と韓国で採種された韓国の品種を、それぞれ日本と韓国で栽培して、キムチを作って食べ比べようと大邱大学の全夏俊さんと目論んでいる。

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