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土壌別経営診断うちの土ではどう作る?

井原豊さん(兵庫県揖保郡)の場合

 そんな中で兵庫県の井原氏は、この課題に長年試みてこられ、見事に目的を達成しておられます。前回登場していただいた乗松氏と井原氏の手法に共通するものはチッソやカリ成分を急激に稲に与えないというものです。このためには、いくつかのその場面にもっとも適する合理的方法を取っておられるのですが、その一つについて説明しながら、背景にある原理原則にふれていくことにします。

 作業手順を追って考察していくと、まず冬季に畜産事業者の手によって堆肥を4~5t散布してもらうということですが、この堆肥にはチッソ成分が0.5~0.8%ぐらい含まれていると想定されます。
 このことは、学校で教える土壌学に素直に従うなら、イネの生育に地カチッソとして働き大変によいことだというわけですが、ここが現実とのギャップです。計算上、堆肥1t当たり5kgのチッソが発源してきてしまいますから、急激なチッソの供給となり、うまいコシヒカリの味にはならないことになります。

 これを冬季に散布して、それを乾燥期にごく浅くロータリ耕をかけてしまうということは、多過ぎるアンモニアを空中に逃がす作業を兼ねていると言えます。そして、1t当たりチッソ成分を1kgまで下げるということです。また、カリ成分も堆肥中に0.5%ぐらいは含まれているので、やはり過剰な量となってしまうことから、この冬季散布で損失させ調節しているということです。

 投入堆肥量とその計算上の数値から、もっとカリ過剰の葉色(どす黒いような緑色)になっでもよいのに、そうならないのは空中に逃げていったとしか考えられないということです。


超浅耕と漏水田の関係

 超浅耕する理由は、前述の過剰成分の空中飛散させることも一つにはあるようですが、もっと大きな目的があります。それは、この地帯は大変に水もちの悪い漏水田であり、また元々の土壌が腐植含量が少なく保肥力も低いということから、水もちの位置(田面水から耕盤までの長さ)ということではないかと考えます。

 漏水田土壌で水もちの位置が高いところにあるということは、その耕盤のところにある堆肥から溶出する微量要素を含めた栄養分がそこから下にしみ出してくるということであり、その下降のスピードが速やかであると考えられます。速やかというより速すぎることで、イネの根がキャッチできないということではないでしょうか。また、圧密になっている耕盤のところでは、肥料成分があっても根がそれを吸収できないのではないかと推測します(上図参照)。

 この井原さんの地域では、水田プラウ耕によってコシヒカリの倒伏がおきでしまったという話の裏付けは、乾土効果によって多量のアンモニアが出てきたことと、耕盤がなくなり、あるいは深い位置に変わり、一度に多くのアンモニア態チッソが吸収されたからではないかと思います。そしてその後は、漏水田のため肥料分は急激に抜け、それにまた追肥をして、さらに生育を乱したのではないでしょうか。

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