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土壌別経営診断うちの土ではどう作る?

井原豊さん(兵庫県揖保郡)の場合

 元肥を入れない理由は、まず初期生育において下層まで根を伸ばすことが目的であり、根が耕盤を突き抜けるためということです。もちろん、急激なチッソとカリの供給をしないことも目的となっているのでしょう。しかし、ごくゆっくりとした肥効は、土壌中から発していく必要があり、このための用意としてアンモニアの抜けた遅効性堆肥が求められたということです。

 施設園芸でもよくわかることですが、堆肥を入れるとびっくりするような急激な肥効が出てきます。

 堆肥に求めるものは、遅効性肥料成分、これは有機態のチッソ、リン酸、カリ、その他の石灰分やマグネシウム、微量要素についても言えることと思います。もちろん作物と栽培体系において、この堆肥に含まれる大量の無機成分を求める場合もあり、それはそのように利用すればよいのです。

 また、井原氏の水田土壌は、春先の作付前が腐植含量8%程度で、それが一作終えて調べてみると5%ぐらいに下がってしまうということは、元々のヤセ田で有機物の消耗が激しい田ということであり、堆肥の成分を消化分解する能力が高いということでもあります。ですから、粘質でこの能力の低い水田に比してミネラルの供給力が高く、うまい米ができる理由にもなっているのでしよう。


疎植が農薬散布を省略する

 疎植する理由は、まず一つには病虫害から守ることができる。つまり農薬散布の必要がなくなることがあると思いますが、それは単に疎植にすれば多収と病虫害がなくなるかというとそういうことではなく、やはり土壌と供給する肥料成分のバランスがとれでいて成り立つことと思います。この疎植のイネの姿はというと、大変丈夫な感じがして、一目ですごいな、という印象です。この疎植が、根の活力のすごさになっていることは自然に理解できます。

 そして、刈り取り時期を出穂から 55日もおける理由も土の管理と疎植の組み合わせと思います。

 穂首の部分がものすごく太く、青々として丈夫そうであることからも、出穂後の日数がかせげることがわかります。これは、おそく出穂してきた穂も死米にならず、完全米に登熟してしまうということで、多収の一つのポイントと思います。穂首が最後まで生きていること、しかも濃い緑色ではなく活力がある状態であるので、早く登熟したモミも胴割れをおこさないでいられるということです。

 以上、稲作における井原氏の土の考え方と栽培についての取り組みをごく簡単に述べてみましたが、このタイプの水田は裏作や転換畑として畑作物をつくりやすいと断面調査から感じました。

 今回の訪問は、井原さんが周りの人の農法や考えを単純に否定してしまうのではなく、まずよく見たり、聞いたりしてその内容をよく検討し、井原さん自身も、ものすごく原理原則を学ばれて、そして50年の月日をかけて到達された土壌管理を含めての栽培法であると思いました。

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