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土門「辛」聞

慣習を重んじるのは「生物学の原理」から

昨年末に出た「決定版 正伝後藤新平」が面白い。藤原書店という、真面目な良書をベストセラーに仕上げるのが上手な出版社が手がけた評判の本である。全8巻で1冊が税込みで5000円近いが、内容は値段以上。隔月刊でちょうど第3巻を読み始めたところだ。
 昨年末に出た「決定版 正伝後藤新平」が面白い。藤原書店という、真面目な良書をベストセラーに仕上げるのが上手な出版社が手がけた評判の本である。全8巻で1冊が税込みで5000円近いが、内容は値段以上。隔月刊でちょうど第3巻を読み始めたところだ。

 第2巻「衛生局長時代」で印象に残った記述があった。

 岩手県水沢市で下級藩士の息子として生まれ、13歳の時に県庁の給仕となり、苦学の末に自費でドイツに留学。衛生学及び衛生行政について学問を究めて帰国した後藤は、内務省に仕官。そこで手掛けた大仕事が、日清の戦役で帰還兵士の「全員検疫」実施。後藤は自ら責任者になって検疫所の建設に携わり、検疫業務の最高責任者として大活躍した。

 「征清の役もだんだん進むにつれて、後送される患者をはじめ、海を越えて往来する者がいよいよ多くなってきた。(中略)内地上陸に先だって、伝染病の輸入を防止しなければならぬ。そのためにはぜひ大検疫所を設ける必要があるので、宇品沖の似ノ島を選んで、大検疫所設置の案を立てた」(同書)

 その完璧な検疫は後年、来日したドイツ国政府要人を驚嘆せしめたというエピソードも紹介されている。

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