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新潟県の挑戦
新潟県が来年度予算に将来の輸出を想定して調査予算を計上し、秋にロンドンで見本市を開催すると知った。そのころ、米の生産国への輸出をあきらめ在留邦人の多いEU諸国へと方向転換し、イギリスとフランスをターゲットにある商社と調整に入っていた。
しかし、新潟県と同じことをしても意味はない。稲作農家が輸出するのだから生産国に送り出したい。議論のすえ二方面作戦を企画した。商売ペースでの輸出と稲作農家のメッセージ発信のイベント的な輸出だ。
品揃えの少ない八百屋
商売ペースの輸出は快調に進んでいった。しかし、イベント的、つまりアメリカへの輸出の話はいっこうに進まない。最大の原因は価格差だった。「いくら新潟の品質のよい米でもアメリカ米の品質と価格に太刀打ちできるはずがない」と、誰も相手にしてくれない。
われわれの馬鹿げた話をまともに相手にしてくれる変り者などいなかった。と諦めていたら「品揃えの少なさ」を自慢する八百屋を思い出した。「コサカフーズワールド」の小坂社長しかいない。
「コサカフーズワールド」はもともと牛肉・特殊野菜・果物の輸入を手がけているが、円高をものともせず和牛をアメリカに輸出している。最近では四日市市に季節の朝採れ野菜しか置かない「フレッシュ・ベジー」をオープンさせた。規格外の朝採れ野菜を毎朝集荷しているだけに店の品揃えは少ない。大手スーパーの逆をいく店だ。
馬鹿げた話は普通でない人が一番話しやすい。小坂社長に輸出の相談にいくと「おもしろい。アメリカでやりましょう」と二つ返事。あまりにあっさりしているのでこちらが拍子抜けしてしまうほどだ。
メジャーは無理でも2Aに挑戦
輸出にあたり、小坂社長に二つだけお願いした。一つは日本国内と同じ価格以上にし、ダンピング販売はしない。二つ目は、地元の人が利用する店でわたしたちがイベント販売に挑戦する。この超無謀なお願いは輸出を実行する条件として(ライスボードの)笛木社長からわたしに付されていた。
輸出自体が無謀なのに高いハードルを自ら課すことにわたし白身は不満であったが仕方ない。笛木は1度言いだしたら絶対に譲らない。小坂社長に嫌味の一つでも言われるかと内心ピクピクお願いしたが「それでいきましょう」とまたまたあっさりと言われてしまった。
小坂社長は最初ロサンゼルスの日本百貨店を考えていたが、急速、日系スーパーに変更してもらった。この日系スーパーの顧客は日系3世4世が中心だ。欧米系アメリカ人をメジャーリーグとすればこのスーパーはさしずめ2Aだろう。1Aの日本百貨店の在留邦人客よりも販売は数段難しくなるが輸出の意味は深まる。
この選択が自分たちの首を締めないことを祈りつつ話はトントン拍子に進んでいく予定だったのだが…………………(この項次号へ続く)
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豊永有
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