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【エクセレント農協探訪記】
千葉県・ちば県北農協
- 土門剛
- 第11回 1996年10月01日
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エクセレント農協探訪記は、どちらかといえば営農を中心とした優良農協が主だった。今回は、営農だけでなく信用事業でも素晴らしい実績をあげている首都圏周辺のエクセレント農協を取り上げてみることにした。都市農協は、金融自由化の暴風雨に見舞われている。そんな中敢然と立ち向っているのが、組合長自ら、「不良債権ゼロ」と豪語する「ちば県北農協」(岡田保組合長)である。
ちば県北農協のプロフィールを簡単に紹介しておこう。農協のエリアは、名前の通り千葉県の北部。利根川と江戸川沿いに埼玉県と茨城県に槍のように突き出た、「千葉のチペット」のような地域である。利根川と江戸川の間を東武野田線沿いに拡がる。都心から3、40キロ圏内にありながらまだまだ農業が強い地域でもある。野菜の取扱高だけでも95年で23億8000万円もあった。
ちば県北農協が、今年6月、新聞記事を賑わした。6月23日付け毎日新聞は、大手監査法人による外部監査を導入することに踏み切ったと報じたのである。経済欄に7段の派手な扱いだった。農政審報告が出る直前のことで、実にタイムリーな話題だった。岡田組合長に、「外部監査をあれだけのスペースで取り上げてもらえれば、広告料に換算していくらぐらいになりますか」と冷やかしてみたら、「暗い話題が続く農協界の中では千金に値するだろうな」という答えが戻ってきた。続いて岡田組合長は。
「どれだけ外部監査を導入しているか、全中に調べさせたら、全国2200農協の中で佐世保市農協(長崎県)だけということでした。他の金融機関はすでに外部監査に委ねています。貯金量が800億円もあって中央会の内部監査では組合員は納得してくれませんよ」
と説明してくれた。
大半の農協組合長は、貯金が減っていくのをただ指をくわえて見ているだけである。あるいは中央会や行政の指示をひたすら待っている。岡田組合長のように先手必勝の動きをする農協経営者はごく稀だ。
監査法人の最大手のトーマツを入れることにしたのは、住専問題がきかっけだった。その理由を岡田組合長は、
「住専問題を契機に、農協系金融機関の経営問題があれこれと話題になりました。時には組合員が動揺するような話が流れてきて、貯金が他の金融機関に流出するなど、私たちの農協の経営にも影響が出始めてきたんです。このまま放置すると、農協経営の屋台骨を揺るがしかねないと判断しました。そこで銀行や信用金庫並みに、ディスクロジャー(経営内容の公開)と外部監査に踏み切ることにしたんですよ」
と説明してくれた。
ちば県北農協のプロフィールを簡単に紹介しておこう。農協のエリアは、名前の通り千葉県の北部。利根川と江戸川沿いに埼玉県と茨城県に槍のように突き出た、「千葉のチペット」のような地域である。利根川と江戸川の間を東武野田線沿いに拡がる。都心から3、40キロ圏内にありながらまだまだ農業が強い地域でもある。野菜の取扱高だけでも95年で23億8000万円もあった。
大手監査法人を導入
ちば県北農協が、今年6月、新聞記事を賑わした。6月23日付け毎日新聞は、大手監査法人による外部監査を導入することに踏み切ったと報じたのである。経済欄に7段の派手な扱いだった。農政審報告が出る直前のことで、実にタイムリーな話題だった。岡田組合長に、「外部監査をあれだけのスペースで取り上げてもらえれば、広告料に換算していくらぐらいになりますか」と冷やかしてみたら、「暗い話題が続く農協界の中では千金に値するだろうな」という答えが戻ってきた。続いて岡田組合長は。
「どれだけ外部監査を導入しているか、全中に調べさせたら、全国2200農協の中で佐世保市農協(長崎県)だけということでした。他の金融機関はすでに外部監査に委ねています。貯金量が800億円もあって中央会の内部監査では組合員は納得してくれませんよ」
と説明してくれた。
大半の農協組合長は、貯金が減っていくのをただ指をくわえて見ているだけである。あるいは中央会や行政の指示をひたすら待っている。岡田組合長のように先手必勝の動きをする農協経営者はごく稀だ。
監査法人の最大手のトーマツを入れることにしたのは、住専問題がきかっけだった。その理由を岡田組合長は、
「住専問題を契機に、農協系金融機関の経営問題があれこれと話題になりました。時には組合員が動揺するような話が流れてきて、貯金が他の金融機関に流出するなど、私たちの農協の経営にも影響が出始めてきたんです。このまま放置すると、農協経営の屋台骨を揺るがしかねないと判断しました。そこで銀行や信用金庫並みに、ディスクロジャー(経営内容の公開)と外部監査に踏み切ることにしたんですよ」
と説明してくれた。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
エクセレント農協探訪記
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