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【Opinion】
韓国の農家が「目からうろこ」と感激する学校
- 農業ジャーナリスト 青山浩子
- 2005年04月01日
韓国の農業は宅配などの物流サービスの発達が遅れていること、外食チェーンの広がりも日本に比べると遅れていることなど、農業を取り巻く環境が、日本とは違う。
個人家庭への宅配や外食企業との直接取引といった多様な販路を、韓国の農家は確保できていなかった。そのため、経営に意欲的な農家も、販売は卸売市場、あるいは農協出荷だけに甘んじるケースが多い。
だが、ここ10年ほどの間にこれらの第三次産業が急速に発達。一方、食の安全志向も高まった。また、サラリーマンも週休二日が普通になった。「これらの変化を見逃すな」と主張したのが、シンクタンクである三星総合研究所の閔勝奎(ミン・スンギュ)主席研究員だ。
「政府主導型の農業の時代は終わり。これからは農家自らがアイデアや創造力を活かし、消費者を満足させる農業に転換すべき」―こう主張する閔研究員は、新時代の農家を育成するため、プライベートな大学「農業ベンチャー大学」を開校した。2000年のことだ。
授業はインターネットを使ったオンライン上での講義と、月1回(1泊2日)全員が集合しての講義からなる。生産技術についての講義は一切なし。月1回の集合講義では、商品デザイン、マーケティング、顧客管理、財務管理などについて専門家を講師に招いて学ぶ。
補助金は使わず、授業料(年間約9万円)は自費、食事は自炊だ。講師も閔研究員のコネクションで全員が手弁当で講義をする。
受講期間は1年。修了後、事業計画書を提出し、妥当性があるかどうかで卒業が決まる。2003年度は100名の学生のうち、約4割は不合格となった。
黄有燮( 42歳、ファン・ユソプ)さん(京畿道華城郡)は、2002年から1年、ベンチャー大学で勉強した卒業生の一人だ。各種野菜を栽培していたが、自分の子供がアトピーになったことがきっかけで有機栽培に転換。だが、生産、販売ともにうまくいかず苦しい経営が続いていた。
そうした折、農業ベンチャー大学があることを知って入学。「作ることばかり考えていた自分にとって、消費者に選ばれる商品を作るにはどうすべきか、という授業は新鮮だった。まさに目からうろこが落ちた感じ」と話す。
授業を通じて、「誰もやっていないことをやらなければダメだ」と感じた黄さん。韓国料理に欠かせないネギを有機栽培で生産している農家が少ないことをリサーチ。ネギの有機栽培を始め、韓国ではまだ珍しい真空パックでの納品を始めた。これらが評価され、生協、量販店などの販路が拓け、売上げはかつての3倍になったという。
黄さんのようにベンチャー大学卒業後、全く新しい視点から商品開発をしたり、販路開拓に乗り出して成功を収めている農家は少なくない。
卒業生の一人、ナシ農家李贇鉉(イ・ユンヒョン)さん(58歳、京畿道華城郡)は、ナシを産直で買ってくれる消費者を呼び、7haのナシ園を使って野外コンサートを定期的に開いている。今後は、ナシの花が咲く頃を狙って、ナシ園での結婚式を企画するなど、農園の新しい“商品化”を模索している。
この農業ベンチャー大学、最近は農家以外にサラリーマンが入学するケースも出てきた。コンピュータ関連企業に勤めるサラリーマンが「農業には関心があったが、どうやって入り込んだらいいかわからない」と入学を決めたという。
このことや黄さんや李さんの覇気のある表情に、韓国農業の急速な変化の様子を垣間見ることができる。
個人家庭への宅配や外食企業との直接取引といった多様な販路を、韓国の農家は確保できていなかった。そのため、経営に意欲的な農家も、販売は卸売市場、あるいは農協出荷だけに甘んじるケースが多い。
新時代の農業育成する“大学”
だが、ここ10年ほどの間にこれらの第三次産業が急速に発達。一方、食の安全志向も高まった。また、サラリーマンも週休二日が普通になった。「これらの変化を見逃すな」と主張したのが、シンクタンクである三星総合研究所の閔勝奎(ミン・スンギュ)主席研究員だ。
「政府主導型の農業の時代は終わり。これからは農家自らがアイデアや創造力を活かし、消費者を満足させる農業に転換すべき」―こう主張する閔研究員は、新時代の農家を育成するため、プライベートな大学「農業ベンチャー大学」を開校した。2000年のことだ。
授業はインターネットを使ったオンライン上での講義と、月1回(1泊2日)全員が集合しての講義からなる。生産技術についての講義は一切なし。月1回の集合講義では、商品デザイン、マーケティング、顧客管理、財務管理などについて専門家を講師に招いて学ぶ。
補助金は使わず、授業料(年間約9万円)は自費、食事は自炊だ。講師も閔研究員のコネクションで全員が手弁当で講義をする。
受講期間は1年。修了後、事業計画書を提出し、妥当性があるかどうかで卒業が決まる。2003年度は100名の学生のうち、約4割は不合格となった。
黄有燮( 42歳、ファン・ユソプ)さん(京畿道華城郡)は、2002年から1年、ベンチャー大学で勉強した卒業生の一人だ。各種野菜を栽培していたが、自分の子供がアトピーになったことがきっかけで有機栽培に転換。だが、生産、販売ともにうまくいかず苦しい経営が続いていた。
そうした折、農業ベンチャー大学があることを知って入学。「作ることばかり考えていた自分にとって、消費者に選ばれる商品を作るにはどうすべきか、という授業は新鮮だった。まさに目からうろこが落ちた感じ」と話す。
授業を通じて、「誰もやっていないことをやらなければダメだ」と感じた黄さん。韓国料理に欠かせないネギを有機栽培で生産している農家が少ないことをリサーチ。ネギの有機栽培を始め、韓国ではまだ珍しい真空パックでの納品を始めた。これらが評価され、生協、量販店などの販路が拓け、売上げはかつての3倍になったという。
サラリーマンの入学も
黄さんのようにベンチャー大学卒業後、全く新しい視点から商品開発をしたり、販路開拓に乗り出して成功を収めている農家は少なくない。
卒業生の一人、ナシ農家李贇鉉(イ・ユンヒョン)さん(58歳、京畿道華城郡)は、ナシを産直で買ってくれる消費者を呼び、7haのナシ園を使って野外コンサートを定期的に開いている。今後は、ナシの花が咲く頃を狙って、ナシ園での結婚式を企画するなど、農園の新しい“商品化”を模索している。
この農業ベンチャー大学、最近は農家以外にサラリーマンが入学するケースも出てきた。コンピュータ関連企業に勤めるサラリーマンが「農業には関心があったが、どうやって入り込んだらいいかわからない」と入学を決めたという。
このことや黄さんや李さんの覇気のある表情に、韓国農業の急速な変化の様子を垣間見ることができる。
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青山浩子 アオヤマヒロコ
農業ジャーナリスト
愛知県岡崎市生まれ。京都外国語大学英米語学科卒業。日本交通公社(JTB)勤務を経て、韓国延世大学に留学。帰国後、(株)船井総合研究所などに勤務。在職中、農業関連のコンサルティングに携わる。1999年に独立、農業関連のフリージャーナリストとして活動中。著書に、『「農」が変える食ビジネス』(日本経済新聞社)、『農産物のダイレクト販売』(共著、ベネット)、『強い農業をつくる』(日本経済新聞出版社)がある。農業関連の月刊誌、新聞などに記事を連載する一方、茨城大学農学部の非常勤講師、韓国農民新聞の客員記者も務める。
http://aoyama.my.coocan.jp
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